【9月2日 AFP】地球温暖化が最悪のシナリオを辿った場合、中国の主要穀物の収穫高は現在の5分の1にまで減少する恐れがあるとする論文が、1日の英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。

■20世紀は「最も暑い世紀」

 北京大(Peking University)などの研究チームによると、中国の気候は過去半世紀で明らかに温暖化した。全国の平均気温は1960年比で1.2度上昇し、中でも北東部では10年あたりの気温上昇幅が0.36度、内モンゴルでは0.4度と、温暖化が顕著だという。

 統計を取り始めた1600年以来、20世紀は最も暑い世紀となった。年平均気温の上位7位はすべて過去10年の間に集中している。全国的に熱波の発生が頻繁になり、気温0℃以下の日数は大幅に減った。主要河川の水源である氷河も後退しつつある。

 異常気象がもたらす災害も深刻だ。1998年には長江(揚子江、Yangtze)の氾濫で2100万ヘクタールもの土地が冠水し、破壊された家屋は500万戸に上った。

 今年の洪水被害も甚大だ。前月31日の発表によると、被災者数は2億3000万人で、うち避難生活を余儀なくされた人は1500万人以上。死者・行方不明者は4200人を超えている。

■「水ストレス」が最大の脅威

 論文の主執筆者である北京大の朴世龍(Shilong Piao)研究員(環境科学)は、正確な予測は難しいとしながらも、気候変動が最悪のシナリオに沿って進んだ場合に中国経済が直面する諸問題について警告する。

「中国の経済は近年爆発的に成長しているが、世界の耕作地のたった7%が世界人口の20%の食糧供給を支えていることを考えれば、中国経済は気候変動に対しては脆弱かもしれない」 

 最大の脅威は水資源が不足する「水ストレス」だ。中所得者層の拡大で深刻になりつつある。

 水資源は中国南部では豊富だが、北部では乏しい。国民1人あたりが利用できる水の量は世界平均のわずか25%だ。多くの土地で、気候変動によって水資源の利用可能度や穀物生産高が大きく左右される。

 最良のシナリオでは、21世紀半ばの穀物生産高は、1996~2000年レベルと同等か、二酸化炭素排出量の増加がプラスに働いて増える。しかし最悪のシナリオでは、灌漑栽培ではなく天水栽培の場合、コメの生産高は4~14%、小麦の生産高は2~20%、トウモロコシの生産高は0~23%減少する。

 なお、シナリオには農業技術の改良の見込みは加味されていない。(c)AFP