【8月10日 AFP】温暖化による気温上昇がわずかだとしても、世界最大の穀倉地帯であるアジアのコメ生産量は大幅に減り、貧困や飢餓に陥る人が増大するとする論文が、9日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表された。

国連食糧農業機関(Food and Agriculture OrganizationFAO)と米、フィリピンの研究チームは、1994~99年に中国、インド、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナムの計227の田んぼで、1日の最低・最高気温の上昇が稲に与える影響を調査した。

 その結果、1日の最低気温、つまり夜間の気温の上昇が、収量の減少を招いていることが明らかになった。

 研究を主導したカリフォルニア大学サンディエゴ校(University of California, San Diego)のジャロッド・ウェルチ(Jarrod Welch)氏は、「日中の気温の上昇はある程度までは収量増につながるが、将来的には夜間の気温の上昇による収量減の方が上回るだろう」と話す。日中の気温より夜間の気温の上昇速度の方が大きいためだという。

 過去25年間の気温上昇により、一部の主要産地では収量が既に10~20%減少した。21世紀半ばまで続くと見られる地球温暖化により、さらなる収量減が予想される。アジアでは約6億人がコメを主食としていることから、貧困や飢餓に陥る人が増大することが懸念される。

 ウェルチ氏は、稲の栽培方法の改良や新しい品種の開発により対処する必要性を強調している。(c)AFP