【7月29日 AFP】1世紀にわたって続く植物性プランクトンの減少によって海の食物連鎖が崩壊する恐れがあるとの論文が、28日の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。人間による魚の消費も影響を受ける恐れがあるという。

 研究チームは植物性プランクトンの減少を調査するため、1990年代以降については衛星画像を、衛星画像のないそれ以前については、直径20センチの白い円盤を沈めて見えなくなる深さを測定した19世紀後半以降のデータを用いた。水中に光が届く深さは、植物性プランクトンが持つ葉緑素の濃度を知るよい指標になるという。

 その結果、海洋生物のピラミッドを支える植物性プランクトンは毎年1%の割合で減少しており、1950年に比べるとその量は40%も減少したことが分かった。加速度的に大きくなっている地球温暖化が影響した可能性が高いという。

 論文の主著者、カナダ・ダルハウジー大学(Dalhousie University)のダニエル・ボイス(Daniel Boyce)教授は植物性プランクトンを「海の生態系を動かす燃料」と表現し、その減少は人間を含めた食物連鎖に連なるすべての生物に影響を与えると指摘している。

 また、減少の速度は気候変動に伴う海面温度の上昇と一致しているという。植物性プランクトンは他の植物と同じように日光と養分を必要とするが、海水温度の上昇によって海水が階層化し、深海層の養分があまり届かない「デッドゾーン」が表層部にできているという。

 共著者のボリス・ウォーム(Boris Worm)氏は「植物性プランクトンは地球を維持するシステムに必要不可欠な要素。われわれが呼吸する酸素の半分をつくり、地表の二酸化炭素を減らし、究極的には水産業全体を支えている」とし、論文の結論は懸念すべきものだと指摘している。(c)AFP/Marlowe Hood