【4月30日 AFP】油流出による海洋汚染はどこで起きても壊滅的だが、米南部ルイジアナ(Louisiana)州沖の石油掘削基地の爆発炎上事故で流出した原油の除去を急ぐ作業員らが直面しているのは、とりわけ悪夢のようなシナリオだ。

 フロリダ沿岸は、400種の生物が生息し、数十億ドル規模の漁業の行われる湿地帯だ。「沿岸はボートを使わないと行き来できない湿地帯が何マイルも続いている。非常にデリケートな地域なのです」と、米テュレーン大学(Tulane University)応用環境公衆衛生センターのルアン・ホワイト(LuAnn White)氏は説明する。「ボランティアが大挙していっせいにビーチをきれいにするというわけにはいきません」。高波や風によって湿地帯深く油が入り込む可能性も懸念の種だ。

 また、ミシシッピデルタ(Mississippi Delta)の肥沃(よく)な堆積物が流れ込むメキシコ湾岸の湿地帯は、米国の湿地帯全体の40%を占め、魚やエビ、カニなどの絶好の繁殖地となっている。カキ養殖も盛んで、数多くの渡り鳥も立ち寄る。「今回の事故が起きたタイミングが春だったのは、鳥にとっては最悪。営巣と繁殖の時期だけに、巣を構えた場所に原油が漂着したらひとたまりもない」と、自然保護団体オーデュボンソサイエティ(Audubon Society)のメラニー・ドリスコル(Melanie Driscoll)氏。

 鳥やほ乳類は羽や毛が原油まみれになってしまうと、窒息や低体温症で死んでしまう。また、カメやワニなどのは虫類、ほ乳類でも沖に生息するイルカやクジラは、原油に浸かった餌を食べたり、呼吸のために水面に出たところで原油が体内に摂取されてしまうことから、炎症や臓器不全などを起こす危険性がある。

 肥沃な土壌が海に流出するのを防いでいる植物への影響も心配される。米海洋大気局(NOAA)の生態学者トム・ミネロ(Tom Minello)氏は、原油流出が長期的に漁業資源に及ぼす被害を懸念している。(c)AFP/Allen Johnson