【12月27日 AFP】米ミシガン(Michigan)州は21日、シカゴ(Chicago)一帯の水路をすべて封鎖することを米連邦最高裁に要請した――増えすぎたハクレンやコクレンなどのアジア産のコイ科の魚の生息地拡大を食い止めるためだという。

 これらの魚は、非常に食欲旺盛(おうせい)で、繁殖力が強く、最大で全長2メートル以上、体重70キロ近くにまで成長する。在来種の生態系に脅威を与えているほか、ボートのエンジン音を聞いて水面に飛び上がるためボートに乗っている人にぶつかる危険性がある。

 州当局は、この魚がミシシッピ(Mississippi)川からミシガン(Michigan)湖など5大湖に侵入するのを防止しようと、電気ショックの柵を設置した。しかし前月、シカゴ運河(Chicago Canal)の電気柵から1マイル(約1.6キロメートル)ほど離れた場所でこのコイ科の魚が発見された。

 魚の生息範囲がこれ以上拡大するのを防止しようと、州当局はさらに、運河の約9キロの範囲に毒物を投入。電気柵を越えた水域ではこの魚の死がいは1匹も見つからなかったが、運河から1匹が発見され、州関係者はこの魚が多く生息している可能性があるとした。州当局は追加対策の実施を約束し、米ホワイトハウス(White House)も1300万ドル(約12億円)の予算を割り当てた。

 しかし、ミシガン州のマイク・コックス(Mike Cox)司法長官は21日、対策について「5大湖を確実に守るにはまだ不十分」と述べた。

■5大湖の生態系と産業に脅威

 米国連邦政府当局は、これらの魚が「5大湖の生態系に壊滅的な影響を及ぼす」可能性があると述べ、スポーツや漁業などによる70億ドル(約6400億円)規模の5大湖の産業に「重大な経済的打撃をもたらす」危険性があるとしている。

 また、米魚類野生生物局(U.S. Fish and Wildlife Service)は、これらの魚が5大湖の環境によく適応しており、捕食動物もいないことから、在来種を追いやり、たちどころに5大湖の優占種になる可能性もあると述べる。同局はこの問題を扱うウェブサイトを開設し、「いったん湖に入ってしまったら、これらの魚を管理することは非常に困難だろう」と警告している。

 この魚はもともと、農場や排水処理施設などの池をきれいに保つ目的で、1970年代に米南部に放流された。その後、90年代の大洪水をきっかけにミシシッピ川にも生息するようになり、それ以降はミズーリ(Missouri)州やイリノイ(Illinois)州の河川にも生息範囲を広げた。(c)AFP/Mira Oberman

【参考】米国魚類野生生物局が開設したサイト(英語)