【12月6日 AFP】アジアの農民は休暇に航空機で海外旅行をしたり、大型エンジンを搭載した乗用車を乗り回したりすることは少ないかもしれないが、温室効果ガスの排出量削減の一つの大きな鍵を握っているのは彼らだと科学者たちは指摘する。

 現在、温暖化の要因として注目されているのは主に化石燃料の使用と熱帯森林の伐採だが、温暖化の一因とされるメタンを最も多く放出するのが稲作の水田なのだという。温室効果ガスとしては二酸化炭素がもっともよく知られているが、大気中のメタンは二酸化炭素の少なくとも20倍もの温室効果があるとされている。

 フィリピンのロスバニョス(Los Banos)にある国際稲研究所(International Rice Research Institute)の生物学者レイナー・ワスマン(Reiner Wassmann)氏によると、メタンは温室効果ガスの全排出量の5分の1を占める。メタンの主要な発生源はウシのゲップと生分解性の埋め立てごみだが、全体の約10%は水田から放出されているという。

 だが、稲作を、温暖化の主因であることが明らかな化石燃料の使用と同列に考えるのは誤りであり、気候変動への影響を和らげるような農業をすればよいとワスマン氏は言う。

 そのための第一歩として農民たちが実行すべきことは、水田の水を減らすことだという。メタンは有機物が微生物によって水中で分解され発生するからだ。今後水不足が顕在化すれば、節水型の農法が普及していくはずだとワスマン氏は指摘する。

 しかし水田からは別の温室効果ガスである亜酸化窒素も放出されていることが問題を複雑にしている。亜酸化窒素は広く使われている窒素肥料が発生原因であるとされる。ワスマン氏は窒素肥料をより効率的に使うことも必要だと考えている。

 7日から開かれる国連気候変動枠組み条約(UN Framework Convention on Climate Change)第15回締約国会議(COP15)では、稲作の問題は本格的に取り上げられないと見られるが、COP15後に開催されるより技術的な問題を話し合う会合で徹底的に討議してほしいと、ワスマン氏は期待を寄せている。(c)AFP