【11月16日 AFP】大西洋まぐろ類保存国際委員会(International Commission for the Conservation of Atlantic TunasICCAT)は15日、ブラジルのレシフェ(Recife)で開いた年次総会で、東大西洋および地中海(Mediterranean Sea)における2010年のクロマグロ漁獲枠を、09年の1万5000トンから1万3500トンに削減することを決定した。環境保護団体からは、漁獲削減だけではクロマグロの保護には不十分だと批判の声が相次いであがっている。

 ICCAT総会を傍聴した米非営利調査機関ピュー環境グループ(Pew Environment Group)は、ICCATが10日間の会議でクロマグロの捕獲禁止を決定しなかったことを不満とする声明を発表した。

 環境保護団体らは、大西洋や地中海のクロマグロは、日本などのアジア市場向けの乱獲で絶滅の危機に瀕していると主張している。

 すしネタとして日本でも人気が高いクロマグロ漁では、ICCATが設定した漁獲枠を超えて行われる操業や密漁が後を立たず、生息数は東大西洋で85%、西大西洋で90%以上も減少しているといわれる。

 ピュー環境グループ国際監視部門のスーザン・リーバーマン(Susan Lieberman)氏は、AFPとの電話インタビューで、漁獲枠削減はクロマグロ保護への前向きな一歩だとしつつ、「(削減量が)少なすぎるし遅すぎる」と述べ、生息数の5割回復もままならないと悲観的な見方を示した。

 国際環境保護団体グリーンピース(Greenpeace)なども同日、同様にICCAT決定への失望を表明している。

 米国を拠点とする海洋研究機関Blue Ocean Instituteのカール・サフィーナ(Carl Safina)所長は、ICCAT総会に先立ち、ICCATについて「過ちと、真剣にプロフェッショナルとして科学的見地に耳を傾けることを冷笑し敬遠する態度のイメージキャラクター」だと酷評した。
 
 来年3月には、絶滅の恐れがある動植物の輸出入を禁止したワシントン条約(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and FloraCITES)の会合が行われるが、環境保護団体の多くは、この絶滅危惧(きぐ)リストにクロマグロを含めるとのモナコの提案に対する全面支持を表明している。(c)AFP