【11月11日 AFP】地球温暖化の影響で南極の棚氷が急速に融解しているとされる問題で、氷が解けて露出した海面部分が地球温暖化の一因とされる炭素ガスを大量に吸収しているとする研究が、生物学専門誌「グローバル・チェンジ・バイオロジー(Global Change Biology)」に発表された。

 英南極調査所(British Antarctic SurveyBAS)の科学者ロイド・ペック(Lloyd Peck)氏率いる研究チームによると、海面付近に浮遊する植物性プランクトンが大気中および海中の炭素を吸収しているという。

 光合成の過程で炭素を吸収した植物性プランクトンはその後、別の生物の餌となるか、命を終えて海底に沈み、この海域に炭素が貯蔵される形になる。炭素を放出するより貯蔵する量が多いこのような場所のことを「カーボンシンク(炭素吸収源)」と呼ぶ。

 近年、南極半島(Antarctic Peninsula)に連結して海上に浮かぶ棚氷が急速に融解して海面が露出した部分にカーボンシンクがみられるようになった。ここ50年であらわになった約2万4000平方キロの海面部分に、植物性プランクトンが生息しているという。

 研究チームは、緑色の藻が広がる様子をとらえた画像をもとに、この海域で植物性プランクトンが350万トンの炭素を吸収していると推計している。主要な温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)に換算すると1280万トン分になる。これは6000~1万7000ヘクタールの熱帯雨林が吸収するCO2量に相当する。

 ただ、これは化石燃料や森林伐採によって出る温室効果ガスの量に比べると非常に少ない。2007年にこれらの要因で排出された炭素は87億トンだった。

 ペック氏はBASのプレスリリースで、「とはいえこれは重要な発見だ。逆境を生き抜く自然の能力を示している」と述べ、「将来の気候変動を予測するための算定モデルに、この自然の炭素吸収を組み込む必要がある」としている。(c)AFP