【9月9日 AFP】国連食糧農業機関(Food and Agriculture OrganisationFAO)は8日、少数民族のコミュニティーにおける作物の豊かな多様性が、グローバリゼーションを通じた西洋の食習慣の拡大により脅かされているとする報告書を発表した。

 農作物にかつて見られていた遺伝的多様性は、その約4分の3が過去100年の間に失われてしまったという。

 世界各地のへき地にある少数民族の社会では、多種多様な野菜と果物から食材を選べるのに対し、工業化された西側社会では4つの商品作物(小麦、コメ、トウモロコシ、大豆)に過大に頼っているとも指摘している。

 伝統食品には多くの場合、体に良い微量栄養素が豊富に含まれている。コミュニティーによっては、加工食品の導入が健康被害を及ぼしているケースも見られるという。FAOのバーバラ・バーリンゲーム(Barbara Burlingame)氏は、「伝統食品から市販食品やコンビニ食品への切り替えは、肥満や糖尿病、高血圧などの食事関連の病気の増加を伴うことが多い」と説明する。 

 食のグローバリゼーションにより脅かされているコミュニティーの例としては、住民661人が387の食材から選ぶことができるミャンマーとの国境に近いタイのカレンコミュニティー、薬草と緑葉野菜、野生の果物35種に恵まれたケニアのマサイコミュニティー、トナカイ肉やワモンアザラシなど野生生物の食材79種類が身近にあるカナダ北部・バフィン湾(Baffin Bay)のイヌイットコミュニティーなどが挙げられるという。(c)AFP