【8月24日 AFP】和歌山県太地町(Taiji)と姉妹都市提携をしている豪ウエスタンオーストラリア(Western Australia)州ブルーム(Broome)市の市議会は22日、太地町近海でのイルカ漁に抗議し、全会一致で同町との姉妹都市提携の停止を決定した。

 ブルーム市のグレーム・キャンベル(Graeme Campbell)市長によると、太地町との姉妹都市関係は、日本からの移民が同市の真珠貝採取産業を発展させた1800年代にまでさかのぼるもので、決定は不本意だったが、イルカ漁を容認できないことで全議員が一致したという。

 同市長は24日、AFPの取材に対し「日本からの多くの人びとがこの町にもたらしてくれた歴史的、文化的貢献や、今も太地町に親戚をもつたくさんのわが市民のことを思うと、今日はブルーム市にとって彼らをがっかりさせるに違いない悲しい日だ。しかし、イルカ漁を見逃すことは誰にもできなかった」と語った。

 動物保護団体などは、太地町近海で毎年約2000頭のイルカが岸近くに追い込まれ、殺されていると非難している。

 最近では同町付近でイルカ漁を隠し撮りした米ドキュメンタリー映画『ザ・コーブ(The Cove、入り江)』が公開されていた。キャンベル市長によると、この映画の公開をきっかけに「市には抗議のEメールや手紙が、内外から津波のように殺到し」、姉妹都市提携の解消を迫られた。1日に寄せられたEメールは5000通にも上ったという。

 オーストラリア西部の主要都市パース(Perth)から北東に2200キロも離れ、産業を観光に依存するブルーム市にとって、太地町との姉妹都市関係によって観光客離れが進むことも懸念のひとつで、議会で討議されたという。

 キャンベル市長は、イルカ漁が停止されれば、ブルーム市は姉妹都市関係の再開を心から望んでいると述べ、「太地町の人びとも今回の決定を悲しみ、残念に思っていると思う。今後これがどう影響するかは太地町次第だ」と語った。(c)AFP