【7月14日 AFP】(写真追加)中国人の旺盛な食欲が東南アジアに生息する希少動物センザンコウを絶滅の危機に追いやっていると警告する報告書を、野生動物取引の監視団体「トラフィック(TRAFFIC)」が14日発表した。

 センザンコウはアルマジロに似た有鱗目のほ乳類で、歯を持たず、シロアリなどを食べるため、害虫駆除の役割を果たしている。中国では、古くからセンザンコウの肉を食用とする習慣があるほか、うろこなどが伝統薬として用いられてきた。

 需要が増加する一方で、中国内に生息するセンザンコウが激減したことから、東南アジアでセンザンコウの密輸が横行し、個体数の急激な減少を招いているとトラフィックは指摘する。

 際限なく続くセンザンコウの密猟を阻止するためには、当該国政府が断固とした意志をもって密輸対策に取り組む必要があると、トラフィック東南アジア支部のクリス・シェパード(Chris Shepherd)所長代行は訴える。具体的な対策としては、密猟を取り締まる国内・国際法の整備、センザンコウの保護対策、違法取引の監視強化、現存する個体数調査などを挙げている。

 現存するセンザンコウの正確な個体数は不明だが、報告書によれば、センザンコウはアジア地域の違法取引で最も頻繁に押収される動物だ。

 報告書には、カンボジア、ベトナム、ラオスの熱帯雨林でセンザンコウはほとんど見られず、現在は、その他の東南アジア諸国やアジア以外の地域がセンザンコウの供給源となっているとする、密猟者や密輸業者の証言が掲載されている。

 2008年3月にはベトナムで、インドネシアのスマトラ(Sumatra)島から密輸された冷凍センザンコウ24トンが押収された。その4か月後にも、スマトラ島で冷凍センザンコウ14トンが押収されている。このほか、アフリカから密輸されたセンザンコウも見つかっているという。

 国際自然保護連合(International Union for the Conservation of NatureIUCN)・種の保存委員会のサイモン・スチュアート(Simon Stuart)議長は、「アリなどを食べるセンザンコウによる害虫駆除の価値は数100万ドルに相当する」と述べ、生態系の観点からも、センザンコウの重要性を強調した。(c)AFP