【6月24日 AFP】国際捕鯨委員会(International Whaling CommissionIWC)の年次総会が22日、ポルトガルのマデイラ島(Madeira)で始まった。日本などの捕鯨国が激しく槍玉にあげられると予想されるなか、横浜の野毛地区では居酒屋やレストランが、客を呼び込もうとクジラ料理の新メニューを展開している。

 この「野毛くじら横町」の細い路地に軒を連ねる飲食店をのぞいてみると、定番のクジラの刺身のほか、ギョーザ、生春巻き、ベーコン、イタリア風チーズカツレツといったクジラのメニューが並ぶ。

 野毛飲食業協同組合の田井昌伸(Masanobu Tai)さんは、「クジラの肉は日本の大切な文化」だとし、「捕りすぎない分にはいいのでは。美味しいし、高たんぱくで低脂肪」だと話す。

 オーストラリアやニュージーランドを筆頭とした反捕鯨国や環境保護団体は、日本が毎年南極海などで行っている調査捕鯨を「残酷で不必要」と非難している。

 IWCは1986年に商業捕鯨モラトリアム(一時停止)を開始したが、日本政府は「科学的調査を目的とした捕獲」は容認されるとし、西洋諸国などからの批判に対しては「日本古来の伝統に対して無神経だ」と反論している。

 田井さんらの活動は、横浜が今年開港150周年を迎え、横浜の伝統的なクジラ文化を祝う意味合いもある。当時、鎖国状態の日本に開国するよう圧力をかけたのは、米国の貿易船や捕鯨船だった。

「開港の歴史を見てみると、(開港後や戦後にクジラの肉が横浜で放出され、クジラ肉・料理を売る屋台が出ていた)文化が脈々とある」と田井さん。第二次大戦後、横浜の闇市で売られていたクジラの肉は、当時の国民の貴重なタンパク源だったという。

 IWCについては、「(IWCを脱退する国もあるが)日本は枠組みの中で、国際社会の理解を促しながら、文化を守るべき」と話した。「一般の人は食べていないから・・・懐かしがって来る人もいるし、会社からクジラを食べたことの無い若い人を連れてくる人もいる」

 日本経済新聞(Nikkei Business Daily)が2008年に行った調査では、クジラの肉を食べたことがある日本人は、20代では12%に過ぎないという結果が明らかになっている。

 世界自然保護基金(WWF)と世界クジラ・イルカ保護協会(Whale and Dolphin Conservation SocietyWDCS)は19日、主要捕鯨国の日本とノルウェーが捕鯨産業を支援するため巨額の税金を無駄につぎ込んでいると批判する報告書を発表している。

 IWCの今回の総会では、日本政府が南極海での調査捕鯨の規模を縮小するのと引き換えに日本近海での商業捕鯨を認めるかが焦点となっている。(c)AFP/Hiroshi Hiyama