【6月22日 AFP】天然の水源を持たず、いかに生活用水を確保するかが長年の緊急課題だったシンガポールで、このほど雨水の再利用で生活用水の大部分をまかなうシステムが確立された。シンガポール政府は世界で1000億ドル(約9兆6000億円)規模の需要が見込まれる水リサイクル分野で、同国が中心的な役割を担うことを目指している。

 豊かな経済力と軍事力を備え存在感を増しているシンガポールの弱点が、天然資源を持たないことだった。国土はわずか700平方キロ、水源となる水系や河川がないため、必要な水の大部分は隣国マレーシアからの輸入に依存してきた。しかし、マレーシアと1965年に同国から分離独立したシンガポールの間では、水の供給をめぐってしばしば議論が起きていた。

 シンガポール公益事業庁(Public Utilities BoardPUB)の長官は、「独立以来、水資源の確保がわが国の持続的な成長と発展のための最重要課題だった」とAFPに語った。

 政府が注目したのは、降雨量が年間を通じて豊富な点だ。合計すると国土の3分の2ほどの面積を占める広大な貯水池を15か所に作り、全長7000キロにわたって張りめぐらされた排水管網から流れ込む雨水を蓄えるシステムを完成させた。貯水池の数は、来年には17に増える予定だ。

 環境に優しい国としての地位を確立することを最終目標に、政府は貯水池を美しい景観の湖に作り替え、水上スポーツ大会などを主催する予定だ。現在はコンクリートがむき出しの排水路や運河も、将来は自然豊かな美しい小川に生まれ変わると、PUB長官は話している。(c)AFP