【5月11日 AFP】欧州連合(EU)によるアザラシ製品の禁輸措置に動揺を隠せないカナダの議会が、バンクーバー(Vancouver)で開催される2010年冬季五輪でカナダ選手にアザラシの皮で作ったユニフォームを着用させようと提案したが、五輪委員会は7日、この提案を拒否した。

 欧州議会(European Parliament)は5日、アザラシの商業捕獲への抗議として、EU域内でアザラシ製品の輸入や取引を禁止する法案を可決した。これに対し、カナダでは怒りが巻き起こっており、世界貿易機関(World Trade OrganizationWTO)で是正を求めていく動きも出ている。

 カナダ下院は6日夜、カナダ五輪委員会(Canadian Olympic Committee)に選手のユニフォームをアザラシの皮で作るよう求めるとともに、政府に対して冬期五輪でアザラシ猟を宣伝するよう求める動議を全会一致で採決した。

 先住民イヌイット(Inuit)の団体「Inuit Tapiriit Kanatami」のメリー・サイモン(Mary Simon)代表も、声明で動議への支持を表明した。

 サイモン代表は、五輪委員会が、イヌイットの石の道標「イヌクシュク(Inukshuk)」をバンクーバー五輪のロゴに使用したことを指摘し、五輪委員会に対し「われわれの文化も含めてイヌイットを最後まで支援すべき。そして、アザラシ猟もわれわれの文化だ」と要求した。

 しかし、カナダ五輪委員会(Canadian Olympic Committee)のクリス・ラッジ(Chris Rudge)会長は、ただちにこの案を否定し、ユニフォームを作るにあたってアザラシの皮は一切使わないと語った。

 ラッジ会長はAFPに対し、「われわれは、カナダ人の権利を尊重するし、政治家がこのような議論に関与することを尊重する。しかし、社会的・政治的な問題に関与することは、五輪や五輪チームの役割ではない」と述べた。

 カナダ政府は、350年の伝統を持つアザラシ猟は北大西洋の漁業従事者約6000人にとって最大で年収の35%を占める必要不可欠なものであるとの考えを維持している。(c)AFP