【12月15日 AFP】国際社会の地球温暖化に対する取り組みが進展せず、グリーンランド氷河が後退する速度に遅れを取っている昨今、かつては「クレイジー」「危険」とみなされていた地球救済策が脚光を浴びるようになってきた。

「急場しのぎ」として注目を集めつつある救済策は、門外漢にとっては、さながらサイエンスフィクションに材をとったように聞こえるかもしれない。 

 その1つが、鉄を含んだ塵(ちり)を海にまくというものだ。二酸化炭素(CO2)を吸収する表層プランクトンの成長を促進する狙いがある。プランクトンが死んでも、吸収されたCO2は、死骸(しがい)もろとも海底に沈むという利点もある。

 もう1つは、1995年にオゾンホール研究でノーベル化学賞を受賞したパウル・クルッツェン(Paul Crutzen)氏が提唱する、二酸化硫黄の粒子を地球の成層圏に注入する方法だ。太陽光線を遮断する働きを持つ硫黄が、地表温度を約1度程度下げると考えられている。

 さらに斬新なのが、アリゾナ大学(University of Arizona)の天文学者、ロジャー・エンジェル(Roger Angel)氏が考案した、地球と太陽の間の宇宙空間に偏向レンズを配置し、いわば地球に「日陰」を作って地球上の太陽熱を減らそうという方法だ。

 さまざまな学会や雑誌で発表されてきたこれら地球工学的な手法は、酔狂であるばかりか生物圏を破壊する恐れもあるとして、敬遠されてきた。また、安全性が確認できたとしても、温室効果ガスを削減する方がはるかに安上がりだとの指摘もあった。 

 だが、地球温暖化問題の深刻さの度合いが増すなか、科学政策において、つい3年前までは考えられなかった地球工学的手法に一定の注目が集まるようになってきているという。

■英国王立協会も調査に乗り出す

 科学界は、地球工学的手法には依然として懐疑的だ。気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate ChangeIPCC)は、前年に発表した通算4回目の報告書のなかで、潜在的なリスクと莫大なコストを挙げて、地球工学的手法をけん制した。

 だが一部の科学者は、地球工学的手法には少なくとも小規模な実験を行ってみるだけの価値があるとの声を挙げ始めている。

 今年、英国王立協会(Royal Society)傘下の雑誌が、地球工学的手法に関する論文を掲載し、協会を驚かせた。この論文は、スタンフォード大学(Stanford University)の世界的権威の気候学者、ステファン・シュナイダー(Stephen Schneider)氏のお墨付きだった。

 同協会は、「地球工学的手法にゴーサインを出す目的ではない」と前置きした上で、同手法に関する独自の分析を行っていることを明らかにしている。分析の結果は、2009年上半期にも発表されるという。(c)AFP/Richard Ingham