【9月3日 AFP】(一部訂正)日本鯨類研究所(Institute of Cetacean Research)は、「海洋資源の減少のためクジラの皮下脂肪は減少しつつある」とする調査捕鯨に基づく研究結果を発表した。

 日本が調査捕鯨のため捕獲している年間数千頭のクジラは、実質的にはスーパーで売られたりレストランや給食に供されたりしていることから、欧米諸国は「商業捕鯨にほかならない」と激しく非難している。

 日本は、捕鯨は日本古来の文化だと主張する。国際捕鯨委員会(IWC)が1986年に採択した商業捕鯨モラトリアム(一時停止)には合意したものの、「調査捕鯨はモラトリアムに違反しない」としている。一方、ノルウェーとアイスランドはモラトリアムの受け入れを拒否している。

■オキアミの減少に起因か

 小西健志(Kenji Konishi)研究員らによる調査は、クジラ6779頭を対象に行われた。うち、妊娠していたクジラを含む4500頭以上が捕獲されたという。

 調査の結果、地球上の食物連鎖に大きく関わるオキアミが、気候変動やザトウクジラなどの一部鯨類の個体数回復により減少しつつあることが分かった。また、南極ミンククジラの皮下脂肪が過去18年で9%(体重17キロに相当)減少していることも判明している。クジラにとって、脂肪は、冷たい海中でも熱を保ち、エネルギーと栄養を蓄える上で不可欠な要素だ。

 研究は、海の生態系が危機に瀕しているとして、オキアミに関するさらなる調査が必要だとしている。ただし、海中に広く分布するオキアミの生態を探ることは極めて困難なため、オキアミを主食とするミンククジラなどのエネルギー貯蔵量を監視することが最も効果的なのではないかと示唆している。

 研究は、ドイツとアラスカに編集部を置く科学誌「Polar Biology」に掲載された。しかし、ほかのいくつかの科学誌には掲載を拒否されたという。

■噛みつく環境保護団体

 環境保護団体は、「オキアミの調査は、クジラを殺さなくても、超音波などを使えば行えるはず」と、研究そのものを非難している。

 グリーンピース(Greenpeace)の海洋専門家、ジョン・ホスバー(John Hocevar)氏は、「皮下脂肪の厚さ」をクジラの健康の尺度にすることは好ましくないと主張する。体重に対する胴回りや体長の比率を調べるのが、望ましい方法だという。

 環境保護団体は、オキアミ減少の理由が「ザトウクジラなどの一部鯨類の個体数が回復されたため」としている点にも懸念を示している。(c)AFP