【7月28日 AFP】寿司ブームが欧米、そして経済活況の中国にも拡大するにつれ、地中海の象徴ともいえるクロマグロ(本マグロ)が資源枯渇するリスクが高まっている。

 ギリシャ・ローマ時代から、最大で900キロという威風堂々とした体躯がめでられてきたこのマグロについて、国際環境保護団体グリーンピース(Greenpeace)や世界自然保護基金(World Wildlife FundWWF)に論文を寄稿したこともあるスペインのある専門家は、「日本人の消費だけでも脅威だが、欧州における寿司バーの人気に加えて中国のマグロ消費量が伸び続けると、地中海にクロマグロがいなくなるかもしれない」と指摘する。

 寿司の人気は1990年代に欧米に広がった。中国でも寿司ブームが起こりつつあり、中国のマグロ消費量はこの6年で急激に伸びているという。

 だが、地中海で捕獲されるクロマグロの圧倒的多数を消費するのは依然として日本だと、フランス国立海洋開発研究所(French Research Institute for Exploitation of the SeaIFREMER)の研究員、フロマンタン(Jean-Marc Fromentin)氏は指摘する。捕獲量の80-85%が日本に輸出されるという。

■マグロ乱獲の歴史

 日本では主にオーストラリア沖のミナミマグロが使用されていた時期もあったが、乱獲で個体数が減少したため地中海のクロマグロに注目が集まるようになったとフロマンタン氏は言う。

 以来、マグロの価格は上がり続けている。欧州の漁船は近代化され、トルコや北アフリカ諸国のマグロ漁船数が増えていることもあり、マグロ漁は大幅に過剰気味だ。

 大西洋まぐろ類保存国際委員会(International Commission for the Conservation of Atlantic TunasICCAT)は、現在の地中海における年間のクロマグロ漁獲量5万トンを当面1万5000トンに減らすべきだとしている。

 地中海のマグロが枯渇した場合、マグロ漁業が存続できず、地中海地域で数千人が職を失うと見られている。(c)AFP/Isabelle Wesselingh