【6月30日 AFP】今年の夏、北極点から氷が無くなるかもしれない――米国の科学者らが27日、地球温暖化に起因する氷床の溶解が新たな段階へ進んだとして警告を発した。

 米コロラド(Colorado)州ボールダー(Boulder)の米国雪氷データセンター(National Snow and Ice Data CenterNSIDC)の研究員Mark Serreze氏は、AFPの取材に対し「今年の夏の終わりには、北極点付近の氷はすべて溶けてしまって、ないかもしれない」と語った。

「現在の北極点付近は、一年氷と呼ばれる非常に薄い氷で覆われている。これらの氷は夏には溶けてしまうことが多い」(Serreze氏)

■アラスカから北極点まで航行できる状態にも

 北極の氷がすべて溶けてしまったことは、有史以来一度もない。もしも今年の夏、一時的にせよ氷がすべて溶けるようなことがあれば、人類史上初めての出来事となる。

 Serreze氏は、今年の夏に北極点の氷がすべて溶けてしまう確率は50%とみている。北極点の氷が溶けてしまえば9月には、米アラスカ(Alaska)州から北極点まで船で直行することも可能かもしれないという。前年の夏には、大西洋と太平洋を結ぶ「北極海航路」が、融氷によって史上最長の期間にわたり航行可能となることがあった。

 Serreze氏によると、北極点の氷がすべて溶けたとしても、北極海全域の氷がすべて溶けることはない。しかし「北極点から氷が無くなる」という事態は、温暖化に起因する環境変化を示すひとつの象徴的な出来事として人々に受けとめられるだろうと、Serreze氏は考えている。「北極点に常に存在するはずの氷が、今年の夏には消えるかもしれない。これはとんでもないことが起きている、と人々も感じるだろう」

■2030年ごろまでに夏の北極海全域から氷が消える?

 Serreze氏は「過去3年間の観察記録をもとに今後の方向性を考えるならば、(北極の氷は)減少する傾向にある。もしかしたら2030年ごろまでには夏の北極海全域から氷が無くなるかもしれない」と話す。

 数年前であれば、北極海全域の氷が溶けてしまうという事態は、2050年から2100年ごろまで起こらないだろうと言われていた。Serreze氏は個人的に5年前だったら、現在の状況を想像さえしていなかっただろうという。

 07年夏の9月中旬には北極圏で、衛星観測を開始して以来最も少ない海氷量が記録された。氷床全体の23%が溶け、2005年に記録した史上最少値を更新した。過去100年で最も少なかった可能性もあるという。

 北極の氷床は毎年、6月中旬ごろに溶け始め、9月中旬前後に最も薄くなる。その後、再び凍り始め、3月中旬に最大の厚さになる。

 温室効果ガスを削減することで地球温暖化の進行を遅めることができれば、北極の融氷速度は緩まるかもしれない。しかし、現在の減少傾向を反転させるためには長い時間がかかるとSerreze氏は指摘する。

 一方で、専門家らは、北極の氷が溶けることによって、世界周航のための新たな航路が生まれたり、北極付近に埋蔵される天然資源を採掘しやすくなるという側面もあると指摘している。(c)AFP