【6月30日 AFP】信頼性のある包括的な海洋生物リストの作成を目指す国際的な調査プロジェクト「World Register of Marine Species」では、これまでに約12万2500種の海洋生物を特定し、複数の別名を持つ約5万6000種について記録を整理してきた。

 このプロジェクトについて、ニュージーランド・オークランド大学(University of Auckland)のマーク・コステロ(Mark Costello)准教授は、「魚類などの海洋生物の減少に対し説得力のある警告を行うためには、信頼性の高い調査が必要だ」と指摘。

 また、魚類、外来種、絶滅危惧(きぐ)種、海洋の生態系の機能などを調査する研究者や、教育関係者にも、信頼性の高い情報を提供することになるという。

■最多で56個の別名

 専門家らは18世紀半ばから、動植物に名前を付け分類するようになったが、誤って複数の名前が付けられた種がいくつもある。

 例えば、ナミイソカイメン(ラテン語:Halichondria panicea)は、ラテン語の別名が最も多く付けられた種だ。1766年に最初に命名されて以来、56個もの別名が付けられた。

 ナミイソカイメンは特定の「住居」を持たずに海中を浮遊し、岩に張り付く。爆発した火薬のようなにおいを発し、姿を変えることでも知られている。

 パリ(Paris)の自然史博物館のフィリップ・ブシェ(Philippe Bouchet)教授は、「陸でも海でも、生物は顔に名前を付けて動き回るわけではないから」とし、「科学の歴史は推測、直感、間違いに満ちている」と語った。

■最終的には約23万種を網羅

「World Register of Marine Species」は、すべての海洋生物の特定と分類を目標に、2000年に立ち上げられた。80か国、約100人の専門家が携わっている。リストは2010年に完成する予定で、最終的には約23万種が網羅されることになる。

 ブシェ教授によると、まだ発見されていないものや、引き続き発見されているすべての種を考慮に入れると、これまでに完了した作業は「氷山の一角」にすぎず、リストの完成までに、これまでに発見された種の5倍の海洋生物が見つかる可能性もあるという。

■陸上の動植物のリスト作成も

 一方、地球の生物の多様性を示すカタログや、陸上の約180万種の動植物の分類を目的にしたほかのプロジェクトも現在進行しているという。(c)AFP

World Register of Marine Speciesのウェブサイト(英語)