【1月22日 AFP】アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ(Abu Dhabi)首長国で、世界初となる二酸化炭素(CO2)を排出しない「ゼロ・カーボン・シティー」の建設が来月から開始される。アブダビで同日開幕した国際会議「World Future Energy Summit」で開発業者が発表した。

■地球に優しい未来型都市

「マスダール・シティー(Masdar City)」と名付けられたこの新都市は2013年の完成予定で、総面積は6平方キロ、想定人口は5万人。太陽光発電など再利用可能なエネルギーで都市全体を賄う。「マスダール」はアラビア語で「資源」の意。

 マスダールの建設に当たるAbu Dhabi Future Energy CompanyADFEC)の担当者はこの都市について、「CO2を排出せず、地球にまったく害を及ぼさない。その上、住民に最高級の生活水準を提供する都市になる」と胸を張る。

■市内交通には「自動ポッド」

 市内の移動には自動車を一切使用せず、路面電車と自動化された「自動ポッド」を利用する。ポッドは水平移動するエレベーターのようなもので、口頭で行き先を伝えるだけでその場所に運んでくれるという。

 都市設計はフォスター・アンド・パートナーズ(Foster and Partners)が担当。高層ビルがひしめくアブダビ市と異なり、マスダール市内は低層建築物で統一され、すべての建物の屋上にソーラーパネルが設置される。海風の吹く場所に建設され、砂漠の熱風と隣接するアブダビ国際空港(Abu Dhabi airport)からの騒音は外壁で遮断する。

■太陽光発電で電力を完全供給

 新都市の電力は、約3億5000万ドル(約370億円)かけて建設される100メガワット級の太陽光発電所が供給。将来的には、発電能力を500メガワットまで拡充し、ピーク時の電力供給圧力を緩和する。

 さらに、マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of TechnologyMIT)と共同で、未来のエネルギーを研究する大学も設置されるという。

■原油依存経済から脱却できるか

 マスダール・シティー計画は、2006年にアブダビ首長国政府が発表した「マスダール・イニシアティブ」と呼ばれる構想の一部だが、民間自然保護団体「世界自然保護基金(WWF)」も旗艦プロジェクトと位置づけ参加している。

 ADFECのアル・ジャービル(Sultan al-Jaber)CEOは「マスダール」構想の意義について、「代替エネルギーに特化した新しい経済分野」となり、「国家経済にも良い影響を与えるだろう」と語る。

 アブダビ首長国にはUAE全体の原油および天然ガスの大半が埋蔵され、埋蔵量はそれぞれ世界第5位と4位。今後150年間は産出できる見通しだ。しかし、ほかの多くの産油国と同様に、UEAも原油だけに依存する経済からの脱却を図ろうとしている。(c)AFP/Laith Abou-Ragheb