【1月14日 AFP】新興国による石油を中心とするエネルギー争奪戦が繰り広げられる中、安全、汚染、コスト面から賛否が分かれている原子力発電が急速に勢いを増している。

 英政府が10日に原発新設を承認する方針を示したことは、各国が原発の新設・建て替えを進める動きの最新のものだ。

 現在、世界31か国の原発201か所で原子炉442基が稼働している。これらの原子炉のうち104基は米国、58基はフランス、55基は日本にあり、合計で全体の約半数を占める。

 フィンランドで原発の建設を進めるフランスの原子力大手アレバ(Areva)は、2030年までに世界で100-300基の原子炉が建設されるとの見通しを示した。

 米国は1979年3月にスリーマイルアイランド(Three Mile Island)原発で起こった悲惨な事故から約30年ぶりに原発を建設する見通しだ。エジプト、モロッコ、アルジェリア、リビアなどの地中海沿岸諸国も最近、初めての原発を建設する方針を示した。

 エネルギー需要が急増している中国は最近、いわゆる第3世代の欧州加圧水型炉(European Pressurized water ReactorEPR)2基をフランスに発注した。

 インドも原発開発を進めたい意向だが、核兵器製造に利用しないよう、まずは国際原子力機関(International Atomic Energy AgencyIAEA)と保障措置協定を締結する必要がある。

■地球温暖化対策でクローズアップされる原発の利点

 一方、欧州諸国の原発に対する見解には大きな開きがある。イタリアは1987年に原発を放棄したほか、ドイツも2020年までには全廃の方針を示している。

 ただ、原油が1バレル当たり100ドル付近で高止まりしていることや地球温暖化対策の必要性などから、これらの国でも原発のメリットについての議論が再開されている。

 国際エネルギー機関(International Energy AgencyIEA)は、ドイツ、スウェーデン、ベルギーが原発廃止政策を遂行すれば、2030年時点のエネルギー供給に占める原発の割合は現在の15%から11%まで低下するとの見通しを示した。

 発電燃料として世界で最も利用されているのは石炭で、シェアの40%を占める。次いでガス(20%)、水力(16%)、原子力(15%)、石油(7%)、そのほかの再生可能燃料(2%)と続く。

 原発が二酸化炭素(CO2)をほとんど排出しないことを考慮すると、石炭にも対抗することができると指摘する専門家もいる。一方で、原発で出される放射性廃棄物を安全に貯蔵するのは難しい上、原発の建設には10年と長い年月が必要となる。これに対し、石炭火力発電所は4年、ガス火力発電所は2年半で建設できる。

 フランス電力公社(EDF)のPierre Gadonneix会長は、原発推進派にとって最大の難関は世論を納得させることだと指摘する。(c)AFP/Anne Renaut