【11月18日 AFP】最新の研究によると海水面の上昇が、地質構造によるさまざまな影響のため、沿岸部の飲用地下水の後退する距離をこれまで考えられていたよりも最大40%拡大させることが分かった。

 地球温暖化の影響についての現在示される多くの予想は、海面上昇によりどれだけ陸地が失われるかという点に主眼が置かれている。

 これに対して、米オハイオ州立大学(Ohio State University)の研究チームは、海面上昇が各地の沿岸部で海水の地下水面への浸透を引き起こし、地下水の塩水化は海岸線よりはるか内陸まで達することを発見した。

 地下水がどれだけ塩水化されるかについては海岸線の構造が深く関係するという。例えば、岩石の絶壁でできた海岸に比べ砂浜のほうが地下での塩水と淡水の混合ははるかに大きい。

 同大で水文地質学を教え、チームを指揮した茨木希(Motomu Ibaraki)教授は、「(海面が上昇した場合)地質の複雑な構造が塩水と淡水の混合を進め、海岸線が後退する距離よりも、塩水化される距離が長いこともあり得る」と説明する。

 同教授はまた、「多くの研究で海岸線が100メートル後退すると地下水も100メートル後退すると指摘されてきたが、我々の研究では、混合がさまざまな影響を受け、これより(最大40%)後退するとの結論に達した」と話す。

 茨木教授と研究チームは、コンピューター上でシミュレーションを行うシステムを構築し、海岸線の地質的構造の差異がどれだけ地下で発生する塩水と淡水の混合に影響するかを研究した。

 次にこのモデルを実際の地理的位置に当てはめ、海水面の上昇でどれだけ淡水地下水が失われるかを求めた。

 国連(UN)の「気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate ChangeIPCC)」は、地球温暖化の影響により地球上の平均海水面が2100年までに14センチから44センチ上昇すると予想している。海岸に面した低地が非常に大きい影響を受けるとされる。

 淡水は比較的小量の海水の混入で飲料ができなくなることから、わずかな海水面の上昇が沿岸部の淡水資源に大きな影響を与える可能性があると茨木教授は指摘する。(c)AFP/Mira Oberman