【8月5日 AFP】インドの首都ニューデリー(New Delhi)で3日、野生動物の保護に関する会議が開かれ、専門家らが「同国内で生息しているトラの個体数は、1300頭から1500頭のみとなった可能性がある」との見解を明らかにした。この数字は、5年前に考えられていた個体数の半分以下。

■2002年の3700頭から激減

 トラの個体数をめぐっては、現在Wildlife Institute of Indiaが州ごとの調査を実施している。同調査の最終結果は12月まで判明しないが、著名なトラ専門家であるValmik Thapar氏は「個体数は1300頭から1500頭の間と見られる」と語り、野生生物の専門家や政府当局の見解も同様だと語った。インド国内では、2002年の時点では3700頭のトラが生息していると考えられていた。

 一方、同会議に出席した政府高官のRavindra B. Lal氏は4日、AFPに対し「Thapar氏が述べた数字は『目安』に過ぎず、公式な数字とは言えない。調査はまだ進行中だ」と語った。

 だが、専門家らは、Wildlife Institute of Indiaによる調査の最終結果はThapar氏が示した数字に近いものになりそうだと見ている。

 過去の個体数調査が足跡をもとに実施されていたのに対し、現在進行中の調査ではカメラトラップが使用されている。そのため、専門家らは過去の推定生息数と現在の推定生息数を単純に比較することはできないと指摘するが、個体数の急速な減少を見て取ることは可能だという。

■やまぬ密猟、進む都市化

 個体数減少の原因には密猟のほか、都市化や森林面積の減少が挙げられる。トラの国際取引は1993年以来禁止されているが、伝統的な漢方薬の原料にトラの一部が使用されている。
 
 保護活動家らは、多くの森林管理ポストが空席のままであることに加え、森林管理スタッフが密猟者に太刀打ちできていないことについて、長期にわたる抗議を続けてきた。

 マンモハン・シン(Manmohan Singh)首相は3日、トラの保護を目的に、森林管理要員を充実させるよう要請した。

 政府当局のLal氏は「野生動物に関する犯罪取締機関の地方事務所を開設する予定」と語る一方で、保護活動家らに対しては「事務所さえ開設すれば犯罪がなくなるというあまりに楽観的な見方をすべきではない」と注意を促した。(c)AFP/Tripti Lahiri