【4月11日 AFP】『狼たちの午後(Dog Day Afternoon)』や『ネットワーク(Network)』などの作品で知られる米映画監督シドニー・ルメット(Sidney Lumet)氏が9日、リンパ腫のためニューヨーク(New York)の自宅で死去した。86歳。米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)が報じた。

 米映画界で最も重要な監督のひとりとされるルメット氏は1924年、フィラデルフィア(Philadelphia)で俳優の父とダンサーの母との間に生まれた。4歳でニューヨークのイディッシュ芸術劇場(Yiddish Art Theater)で子役デビュー。1950年代からテレビ番組の監督をするようになった。

 1957年、初めての長編映画となる法廷劇『十二人の怒れる男(12 Angry Men)』を手掛けた。ある殺人事件の陪審員に選ばれたヘンリー・フォンダ(Henry Fonda)らの討論を中心に描き、この作品でルメット氏は33歳の若さにしてアカデミー賞監督賞に初めてノミネートされた。

 ルメット氏は1982年にも法廷を舞台にしたポール・ニューマン(Paul Newman)主演の『評決(The Verdict)』を手掛け、最後のアカデミー賞監督賞にノミネートされている。生涯にわたって同賞には5度ノミネートされたが、受賞には至らなかった。2005年に名誉賞が授与されている。

■半世紀にわたり数々の俳優とコラボ

 半世紀にわたる活動の中でルメット氏は、ポール・ニューマン以外にも様々なハリウッドスターとタッグを組んだ。『セルピコ(Serpico)』や『狼たちの午後』にはアル・パチーノ(Al Pacino)、『蛇皮の服を着た男(The Fugitive Kind)』(1960年)にはマーロン・ブランド(Marlon Brando)、『夜への長い旅路(Long Day's Journey Into Night)』(1962年)にはキャサリン・ヘプバーン(Katherine Hepburn)が出演している。

 しかし最も有名なルメット作品は、米メディアを辛らつに描いたドラマ『ネットワーク』(1976年)だろう。ピーター・フィンチ(Peter Finch)演じるテレビ司会者が下降気味のキャリアを立て直そうとするも精神に異常をきたしてしまうというストーリーで、アメリカン・フィルム・インスティチュート(American Film Institute)が選ぶ史上最も偉大な作品の19位に挙げられている。アカデミー賞では10部門にノミネートされ、ピンチとテレビ局の重役を演じたフェイ・ダナウェイ(Faye Dunaway)はそれぞれ主演男優賞と同女優賞を獲得した。

 ルメット氏はそのほか、リバー・フェニックス(River Phoenix)主演の『旅立ちの時(Running on Empty)』(1988年)、『オリエント急行殺人事件(Murder on the Orient Express)』(1974年)、マイケル・ジャクソン(Michael Jackson)とダイアナ・ロス(Diana Ross)が共演した『ウィズ(The Wiz)』などでメガホンを取っている。(c)AFP