【9月14日 AFP】米証券大手リーマン・ブラザーズ(Lehman Brothers)が経営破たんして世界的な金融危機の引き金になった2008年のリーマンショックから15日でちょうど5年になるが、金融業界が再び米経済を崩壊に導くのを防ぐという大きな仕事は依然、未完のままだ。

 2300ページに及ぶ膨大な金融取引規制「ウォール街改革および消費者保護法」(ドッド・フランク法、Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act)が成立したのは制御不可能に陥った金融業界によって米経済にもたらされた荒廃ぶりがようやく理解されてきた2010年7月。

 しかし今も自分たちの非を認めようとしない各銀行は新しい規制に抵抗しており、米法律事務所デービス・ポーク・アンド・ウォードウエル(Davis Polk & Wardwell)によると、同法に基づいて各行政機関が制定することになっている関連規則のうち既に決定され、法制化されたのは7月初めの時点で約40%に過ぎない。

 これまでにできている規則によれば、リーマンショックで多くが公的資金による救済を受けざるを得なかった米最大級の銀行各行は、深刻な問題に陥った際に悪影響を最小限にとどめて清算する方法を綿密に記した「遺言状」の作成が義務づけられる。またリーマンショックよりもさらに深刻な危機が起きた場合に耐え得ることを証明する「ストレステスト」を毎年受けなければならない。

 しかし、ドッド・フランク法のうち最も鍵となる規則は銀行の強硬な反対に遭い、まだ決着していない。リーマンショックの核心にあった、自己勘定の証券取引といった自行内部での利益創出を目的とする金融その他の取引を禁止する「ボルカー・ルール(Volcker Rule)」だ。だが多くの銀行はそうした取引を利益の中心となる重要な事業と位置づけ、今後も行うことを望んでいる。

 銀行の動きに批判的な勢力は、銀行業務と証券業務の分離を定め、それ自体が世界恐慌の産物だった1933年のグラス・スティーガル法(Glass-Steagall Act)の復活を望んでいる。これこそが金融システムの欠陥に対処する唯一の方法だとポール・ロバーツ(Paul Roberts)元米財務次官は断言している。

 たとえそうだとしても、多数の監督機関と迷路のように複雑な規則からできている米金融規制の構造自体が懸念を生じさせている。24か国の中央銀行や金融監督当局で構成する「金融安定理事会(Financial Stability BoardFSB)」は8月下旬、米国の金融制度は断片化され、極めて複雑になっていると指摘した。(c)AFP/Jeremy TORDJMAN