【9月10日 AFP】お金で「幸せ」を買うことは可能――ただし年収630万円程度までの人なら。このような研究結果が今週、米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表された。

 2002年ノーベル経済学賞受賞者の米プリンストン大学(Princeton University)のダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)教授と、同僚のアンガス・ディートン(Angus Deaton)教授は、米世論調査企業ギャラップ(Gallup)が2008~09年に実施した米国民の健康と福祉に関する調査「Gallup-Healthways Well-Being Index」の回答45万人分を分析した。

 すると、人びとの「人生の評価」と「心の幸福感」は、年収7万5000ドル(約630万円)あたりまでは、収入に比例して増大していた。これは、2008年の米国の一世帯あたり平均年収(7万1500ドル)をやや上回る額だ。

 ところが、収入の増加がもたらす幸福感は「年収7万5000ドル前後で満たされる」ことがわかったという。

 教授らは、「お金がたくさんあってもより幸せになれるわけではないが、お金が少ないと心理的に苦痛を感じる。たとえば好きな人と一緒に過ごしたり、病気やけがにならなかったり、レジャーを楽しんだりといったことに幸福を感じられる人間の能力は、年収7万5000ドルを閾(しきい)値に、収入の多寡の影響を受けなくなるのだろう」と述べている。

 また、最近の心理学研究で、高額所得者は「ちょっとした楽しみを味わう能力が弱まっている」との報告があることに触れ、年収7万5000ドルを超えると、「それまで増加し続けていた有益な経験をお金で買える力が、何らかのネガティブな効果によって平均化されてしまう可能性も高い」とも指摘した。(c)AFP