【5月3日 AFP】店名をめぐり米ファストフード大手マクドナルド(McDonald's)に訴えられていたマレーシアの首都クアラルンプール(Kuala Lumpur)の小さなレストラン「マックカレー(McCurry)」が、8年間の法廷闘争の末、勝訴した。
 
 マレーシアの店、「マックカレー」はスパイスが香るタンドリー・チキンや魚カレーが売り。プラスチック製のテーブルの上をけだるく扇風機が回る店構えといい、マクドナルドやそのハンバーガーとは間違えようもない小さなレストランだ。店のオーナー、スピアさん(55)は「フライドポテトはないけれど、ポテトカレーは美味しいのがあるよ」と言う。

■小文字のc、使用停止で「Mカレー」

 しかし、マクドナルド側に訴えられ、店名を取り戻すために過去8年間裁判で戦ってきたスピアさん夫妻は、この何年間かは元の「マックカレー」という名称の使用停止を余儀なくされ、「Mカレー」という店名で営業してきた。「マクドナルドのような大会社とわたしらには何の共通点もないのに、訴えられるとは驚いたよ。自分たちのほうが正しいと思ったから、控訴したんだ」(スピアさん)。

 マレーシアの裁判所で行われた控訴審は今週、判決が下り、スピアさんの店名「マックカレー」の「マック」の部分は、マクドナルドの商標権を侵害していないと認められた。

 地元紙は小さなレストランが勝訴した画期的判決を喜ぶ論調で詳しく報じた。スピアさんは自分の店の屋根に高いはしごをかけて上り、派手な看板の店名に「c」の字を復活させた。

 インドで朝食に出されるパンケーキ、「ドーサイ」を食べながら、スピアさんは「好きにできる資金があんなにある大企業にうちが勝つとは誰も思わなかっただろう。わたしたちもほとんどあきらめそうになった時があった」と、国際的大企業に勝訴した驚きを語った。

■「マレーシア・チキン・カレー」を縮めて「マックカレー」

 元々、会計士だったスピアさんは1999年にレストランを開業。店名の「マレーシア・チキン・カレー・レストラン(Malaysian Chicken Curry Restaurant)」を縮め、「マックカレー」という呼称を使った。しかし、1年もたたないうちにマクドナルド側から、名称を変えなければ法的手段に訴えると迫る書簡が届きだしたという。

 両者の話し合いは行き詰まり、マクドナルド側はマレーシア高等法院(Malaysian High Court)に訴え、同裁判所は2006年、マクドナルド側の主張を認め、スピアさんに看板や店名から「c」を除くように命じた。

■「Mc」という接頭辞

 スピアさんの妻は「精神的に大きな苦痛だったし、恥ずかしくもあった。誰も裁判を抱えている者に投資しようなんて思わないから、8年もの間、商売は宙ぶらりんだったし、レストランを良くすることなんてできなかった」と述べ、勝訴までに払った犠牲を振り返った。「これからは前進するのみ、であればいいんだけど」

 しかし、スピアさんの弁護士は、マクドナルド側がそう簡単にあきらめると思っていない。「本件はマクドナルドが『Mc』という接頭辞を独占的に管理したがっていることを示している。同社にはそれをできるだけの豊富な資金力があり、多くの小さな飲食店は彼らに屈している。今回の判決にマクドナルドは控訴するだろう。わたしたちは法廷でまた彼らと戦うつもりだ」と語った。(c)AFP/Romen Bose