【9月25日 AFP】パキスタン南西部で24日に発生した地震により、同国沖合のアラビア海(Arabian Sea)に新たな島が出現し、地元住民から驚嘆のまなざしが向けられている。だが専門家らは、この島はほどなく消滅する可能性が高いと話している。

 マグニチュード(M)7.7の地震は24日午後、バルチスタン(Baluchistan)州アワラン(Awaran)地区付近で発生した。その後も余震が10回以上発生している。当局者によると、これまでに確認された死者はアワラン地区の208人を含む238人。救助隊が遠隔地の集落にまだ到達していないことから、犠牲者はさらに増える見通しという。

 バルチスタン州政府のジャン・ムハマド・ブレディ(Jan Muhammad Buledi)報道官はAFPの取材に「アワランなど6地区で住民30万人が被災した」と述べた。

■沖合に新たな島が出現

 当局者によると、地震でグワダル(Gwadar)の沖合に新たな島が出現した。グワダルに住むムハマド・ラスタムさんはAFPの取材に「突然巨大な物体が水の中から出現したのだから、本当に不思議で少し怖かった」と語った。

 国立海洋研究所(National Institute of Oceanography)の海洋生物学者、モハマド・ダニシュ(Mohammad Danish)氏が民放ジオ・テレビ(GEO television)に語ったところによると、島は幅300フィート(約91メートル)、長さ120フィート(約37メートル)ほど。標高は18~21メートルで、沿岸から200メートルほど離れた場所に出現した。

 同氏によると、専門家チームが島に上陸。「地表で泡が噴き出している場所を発見した。マッチに火をつけたところ着火した。メタンガスだった」という。

■島は「泥火山」、数か月以内に消滅

 豪メルボルン大学(University of Melbourne)の地震学者、ゲリー・ギブソン(Gary Gibson)氏はこの島が「泥火山」である可能性が高いと語る。泥火山は、強い揺れが発生した際に地中のメタンガスが土壌を噴き上げて形成される。

「前にもこの地域で起きたことはあるが、極めてまれな出来事だ」とギブソン氏はAFPの取材に語り、震源から400キロ離れた場所でそのような活動が発生したことを「非常に興味深い」と述べた。

 この「島」は固定された大地ではなく泥の塊なので、海の波で崩され、やがて消えてなくなるという。専門家によると、同じような島は1945年に発生したM8.1の地震の際にも同地域に出現したが、しばらくして消えた。

 カラチ大学(Karachi University)地質学部のシャミム・アフヘド・シャイク(Shamim Ahmed Shaikh)氏は、今回の島も数か月以内に消えてなくなると述べた。このような島が発生するのは、マクラン(Makran)地域沿岸でインドプレート、アラビアプレート、ユーラシアプレートの3つのプレートが複雑に関連しているからだという。(c)AFP