【12月25日 AFP】2004年に発生したインド洋大津波から、26日で丸5年を迎える。

 被災国の1つであるスリランカは、国際社会から数十億ドルの復興支援を受けたが、その半分近くが「使途不明金」となっているという。

 ヤシの木に覆われたラトガマ(Rathgama)村に住む漁師の妻で、2児の母親でもあるプラデーパ(Pradeepa)さん(26)は、いまだに家を再建する資金を受け取っていない。「義援金はわたしたちには一銭も回ってこない。政府は約束を破った」

 津波が襲ってきた時、プラデーパさんは家がつぶされる直前に、寝間着姿でいくつかの宝石類だけをつかんで逃げた。仕方なくプラデーパさんはこれらの宝石を売り、援助金で家を建てることのできた津波生存者からレンガ造りの家を35万ルピー(約70万円)で購入した。

 こうした話は、スリランカではありふれている。

■多額の使途不明金、口つぐむ役人ら

 3万1000人が死亡し100万人が家を失った津波の復興資金として、スリランカ政府は、日本や世界銀行(World Bank)、国連(UN)機関などによる支援22億ドル(約2000億円)に加え、慈善団体や個人などからも多額の寄付金を受けた。

 しかし、世界各国の汚職実態を監視する非政府組織(NGO)「トランスペアレンシー・インターナショナル(Transparency International)」は、このうち10億ドル以上が「使途不明」になっていると指摘する。

 復興初年度に行われた初回の政府監査では、援助額のうち実際に使用されたのは13%以下という結果が公表されたが、それ以後、公式な会計検査は一切行われていないという。「政府が他の目的に使用したとみられるが、役人は報復を恐れて口を閉ざしている」(担当者)

■復興に地域格差、紛争の傷深く

 スリランカ国家住宅開発庁によると、前回07年に行われた国勢調査では、仮設住宅に暮らす人は8865人、住宅再建件数は当初の予想を2万軒上回る11万9092軒だった。

 だが、多数派のシンハラ人が多く居住する南部では住宅が供給過多なのに対し、反政府武装勢力「タミル・イーラム解放のトラ(Liberation Tigers of Tamil EelamLTTE)と政府軍との紛争が絶えなかった北部と東部では、ビニールで覆っただけの仮小屋に暮らす少数派タミル人の姿がよく見られる。

 37年間続いた激しい武装闘争は今年5月に終結したものの、紛争は復興の遅れをもたらした。

 生存者たちの政府や国際社会に対する不満も、聞き届けられていない。南部シーニガマ(Seenigama)の元公務員は、「大統領、大臣、地元政府に、進まぬ復興や設備の不足を解消するよう請願したが、何も起こらなかった」と話した。
 
■批判強める世界銀行

 世銀は最近、1億5000万ドル(約137億円)の津波復興支援金の監査を終了し、多くの政府機関において資金乱用の余地があり、そのため復興計画が減速しているとの見解を示した。 

 スリランカは06年、支援金を復興とは無関係のオートバイ168台の購入に充てていたとして、世銀から13万4000ドル(約1200万円)の返還を求められ、今年5月に返還している。(c)AFP/Mel Gunasekera