【9月8日 AFP】仏南部オートサボア(Haute-Savoie)県の避暑地シュバリーヌ(Chevaline)で自動車の車内外から男女4人の射殺体が見つかった事件で、車に乗っていたのは英国在住のイラク系英国人家族だった。

 仏警察筋によると、運転席から見つかったのはイラク出身で英イングランド(England)南東部サリー(Surrey)州クレイゲート(Claygate)在住のサード・ヒリ(Saad al-Hilli)さん(50)。後部座席から見つかった女性は所持していたイラクのパスポートからイクバル・ヒリ(Iqbal al-Hilli)さんと分かった。ヒリ夫妻の隣人たちは、サードさんはエンジニアの仕事をしており、イクバルさんはサードさんの妻だと証言している。

 後部座席から見つかったもう1人の女性はサードさんの義理の母(74)であることが分かった。この女性はスウェーデンのパスポートを所持していた。また、保護された少女2人はヒリ夫妻の娘のザイナブ(Zainab al-Hilli)ちゃん(7)とジーナ(Zeena al-Hilli)ちゃん(4)と判明した。

■サードさんは英情報機関の監視対象だった、英紙報道

 英大衆紙デーリー・メール(Daily Mail)オンライン版は、サードさんは英情報機関の監視対象だったと報じている。

 デーリー・メールは、米国がイラクに侵攻した2003年、英情報機関に協力するロンドン警視庁特別局の職員らがサードさんを監視していたという隣人の話を掲載した。この隣人は、警察官らに監視場所を提供していたという。

 デーリー・メールの報道についてロンドン警視庁特別局は、被害者がサードさんだと正式に特定されてはいないため、現時点ではコメントできないと発表した。

 このほか、デーリー・メールや高級朝刊紙デーリー・テレグラフ(Daily Telegraph)は、射殺事件は家族間の争いが原因である可能性についても報じた。デーリー・メールが伝えたヒリさん家族の友人の話によると、1年前に死去したヒリさんの父親の遺産をめぐり親族間で争いが起きていたという。

 ヒリさんらは3日からシュバリーヌのアヌシー(Annecy)湖近くのキャンプ場に滞在していたが、同じキャンプ場にいた人たちが、ヒリさん一家の姿が5日に見えなくなったと通報していたという。

 ヒリさん一家の自宅があるクレイゲートでは、知人や隣人らが事件に衝撃を受けている。ある近所の住民は、ヒリさんらは「かわいい子供がいる素敵なイラク人夫婦」で、連れ添って子供たちを学校へ送る姿をよく見かけたと語った。

 クレイゲートはロンドンの金融機関に通勤する人々に人気のある住宅地。(c)AFP/Michael Mainville