【1月20日 AFP】英イングランド中部ダービーシャー(Derbyshire)州で19日、イラク戦争の後、英国に違法に持ち込まれたサダム・フセイン(Saddam Hussein)元大統領の銅像の「臀部」(でんぶ)を持っていた66歳の男が逮捕された。

 英国ではフセイン政権崩壊後の2003年に、イラクへの国連制裁に関して制定された法令で、考古学・歴史・文化・宗教的価値のある「イラクから違法に持ち出された」文化財の取引を禁じている。

 地元警察によると、逮捕された男は保釈されたが、尋問は引き続き行われる。

 男が所持していた60センチ四方ほどの金属片は、米軍侵攻によるバグダッド(Baghdad)陥落時に米海兵隊員が引き倒したフセイン像の一部で、当時、英陸軍特殊空挺部隊(SAS)に所属し、その現場を目撃した英国人ナイジェル・イーリー(Nigel Ely)さん(52)が拾ったものだった。

 イーリーさんはこの銅片を2011年に英国で競売に出品したが、最低入札価格の25万ポンド(約3000万円)に達する落札希望者がいなかった。

 これまでにイーリーさんは、フセイン像の銅片について警察の事情聴取を受けたことがあり、銅片を売ったり、破損したりすれば起訴される可能性があると警告されたが、今回、別の人物が逮捕されたと知って、驚きをあらわにした。

 逮捕された男の氏名は明らかにされていないが、この銅片の買い手を探していた会社と接触があったとみられる。

 一方、イラクからフセイン像の銅片を持ち帰った張本人のイーリーさんは「ベルリンの壁(Berlin Wall)の破片を持っているのと、同じようなものだ。歴史の一部ではあるが、文化財とはいえないだろう」と悪びれることなく語った。「フン族のアッティラ王(Attila the Hun)以来、最悪の暴君が立てた銅像が、なぜ文化財と言えるんだい?」(c)AFP