■ブランド購入ではない“よい消費”

 高級ブランドではなく、自分たちの生活に根ざしたハンドメイドかつインディペンデントなブランドの方が価値があると思われる時代の到来。それはアメリカだけの事ではない。7月に発売された、日本人1万人のデータを基に消費者動向を分析した野村総合研究所による著作『なぜ、日本人はモノを買わないのか?」(東洋経済新報社)の中では、消費の意識の変化をこう語っている。  「高級車や高級ブランド品など、社会的価値=ステイタス性を示す消費(記号消費)への志向性が薄れていく一方で、あまりお金をかけずに自分らしさを表現したいという意識が増加しているのである。そのような中で流行しているのが、商品やサービスを、自分仕様にカスタマイズすることである。(中略)そうすることで、その商品の情緒的価値は高まり、“よい消費をした”という満足感・納得性が高まるのである」

 1万人からしっかり調査しただけあって、ブランド離れの意識は日本でもほぼ確定的に思えるが、はたして「よい消費をした」という消費欲に根付いた幸福感は今でも根強くあるのだろうか? それとももはや消費欲とは違うところに先進都市の人々は幸福感を見いだそうとしているのではないだろうか? 内外の雑誌のライフスタイル化は、消費のトレンドの変化というよりも、消費欲そのもののあり方を根底から問い直しているように思える。

【菅付雅信】
■プロフィール 1964年宮崎県生まれ。法政大学経済学部中退。「コンポジット」、「インビテーション」、「エココロ」などを創刊し編集長を務める。現在は雑誌、書籍、ウェブ、広告などの編集を手がける。著書に「東京の編集」「はじめての編集」「中身化する社会」等がある。
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