■お洒落に反抗するのではなく、生き方を捉え直す

 ファッション誌が路線変更のひとつとしてライフスタイルを標榜していると同時に、海外ではインディペンデントなライフスタイルマガジンも続々登場している。ニューヨークのブルックリンで生まれた食を中心としたフードマガジン『PUT A EGG ON IT』もそのひとつだ。共同編集長であるサラ・フォーブス・ケイオとラルフ・マックが、2008年に500部程度から始め、ストリート感覚溢れる食へのアプローチと自由度の高いアートディレクションの面白さが話題を呼んでいる。サラは、今年7月に原宿ロケットギャラリーにてイベントを行っており、僕もそこで公開インタビューをさせてもらい意見を交わした。そのサラに改めてこの連載のために話を聞いた。

 「実は、はじめから食に関する雑誌をやりたいと思っていたわけではなかったの」とサラ。「でも、食の話題なら誰もが持っているはずでしょう? 食に関る様々なものを通して他の人の生活を垣間見るような雑誌にしたいと考えたのよ。しかも、古めかしくて決まりきった食の写真を撮るんじゃなくて、もっと人々の生活と繋がりを感じさせるような雑誌にね。社会性を持っている、ドキュメンタリーに近いものにしたかったのよ。誌面のデザインに関しては、色んなイラストを盛り込んだり、カラフルな色使いにしてみたりと、大人のための子ども雑誌(Kids magazine for adults)みたいなものを作っているつもりね」

 創刊時のメンバーはたった2人という超インディペンデント・マガジンが、ブルックリンはもちろん、マンハッタンや日本でも話題になっている。小さな規模ではあるが、そこに雑誌作りの未来を垣間みる。

 「創刊号の値段は2ドル。最初は、本当に規模の小さいものだったわ。アイデアを思いついたら、私がテキストを書いて写真を撮り、ラルフがデザインをする、という風に全てを2人でこなしていたのよ(*サラの本職は写真家、ラルフはグラフィック・デザイナー)。そして色んなお店で少しずつ売ってもらったの。すぐに完売だったわ。2号目は、アメリカのクラウドファンディングのキックスターターを使って、いろんな人に出資してもらったの。そのお陰ですぐに2千ドルを集めることが出来たわ。雑誌を販売するためのやり方、資金調達のやり方にも変化が出てきているのだと感じたわ」  彼らが拠点を置くブルックリンの街の勢いを感じる日々だという。しかも、それは対岸の街マンハッタンにも影響を与えているのだと。

  「ニューヨークでもクラフトマンシップへの関心が高まっていて、人々は実用的なものを欲するようになっているわ。知らない人からモノを買うかわりに、原産地がわかるものや、その商品の背景にストーリーがあるものを買いたがっているの。マンハッタンでさえ、ブルックリン・ブランドが人気になってお店もできているほどなのよ! 以前では全く考えられなかったわ。私たちも小さいお店を始めて、さらに私たちのサイトでブルックリン製の商品を売る事も始めたの。また期間限定のレストランも友人たちと始める予定よ。私たちの雑誌は、お洒落を気取ったライフスタイルに反抗するものではなくて、生き方を捉え直すものであってほしいと思っているのよ」