■ファッション誌は、一般誌ではなくなった

 創刊から10年間、ヘアメイクの加茂克也さんや、スタイリストの野口強さん、さらにはエディ・スリマンやラリー・クラークといった内外のトップ・クリエイターとともに『ヒュージ』は強いエッジのあるモード・マガジンとして存在感を放ってきた。そこで築いた軸を基にしつつも、ファッションの周辺にあるライフスタイル関連の題材について、今までと同じ視点のまま特集を組むことが『ヒュージ』の現在形だと右近さんは語る。

 「今までは間違いなく、ファッション誌が一般誌として雑誌文化の中心にありました。しかし、今やメインでファッションだけをやっている雑誌は減り、あったとしてもそれらは専門誌に近くなり、もはや一般誌とは言い難い状況です。誤解を恐れずに言うならば、一般誌だったファッション誌がオーディオや囲碁や園芸、兵器などの趣味雑誌と同等のものになりつつあります。要するに万人にとってジェネラルなものではないということ。これは、近年多くのファッション雑誌がリニューアルをしている現状からもわかるはず。どれだけ素晴らしい内容のファッション特集を作っても、ある一握りの人のためのものになってしまい、結果としてセールスを作れない。だから、一般誌として生き抜くために、もっとライフスタイルの方を取り上げることが大事かもしれないと考えたんです」

 「この特集『食べる つながる』号も、実はファッション特集号よりも反応が良かったんです。“これからは食でやった方がいいんじゃないか!?”というリアクションをいただくほどでしたね。現在“ファッションが終わるのではないか?”という危機感に時代が直面しているように思います。そのことをファッション関係の人々をはじめ、メディアにいる側もひしひしと感じているんです。食もファッションのひとつの捉え方というように考えをシフトしていけば良いのか、それとも必ずファッション・ストーリーがある、オールドスタイルな一冊を一貫して作れば良いのか。自分のなかでも葛藤はあるんです。それもあって、『ヒュージ』は今ではファッション号とライフスタイル号、それぞれ特集を年間に二号ずつ組んでいるのが現状です」