【5月24日 東方新報】中国では自宅にさまざまな理由からカメラを設置する人が増えている。それに伴い、隣人とのトラブルや犯罪も多発している。

 天津市(Tianjin)で1人暮らしをしている20代女性の朱さんは、ペットの猫のためマンションの自室内にカメラを設置した。朱さんは中国の若者の間で言われる「鏟尿官(おしっこ始末係、『ペットの奴隷』というニュアンス)」と自認する典型的な「ペット溺愛家」。勤務中もスマートフォンを通して猫の様子をながめ、「大好きなニャンコの様子を確認できると落ち着くし、仕事の励みにもなる」と話す。

 広東省(Guangdong)で暮らす30代の男性会社員の陳さんは、1800キロ離れた河北省(Hebei)の実家の数か所にカメラを取り付けた。「忙しい都会の生活に疲れた時、実家の光景を見ると癒やされる。年老いた両親に異常がないか確認することもできます」と話す。

 ほのぼのとした話とは対照的に、近隣とのトラブルも発生している。

 上海市のマンションに住む王さんは、隣室の住人が玄関に防犯カメラを設置したことに頭を悩ませている。「エレベーターや階段から自分の部屋へ通路を歩く時、必ずカメラの前を通過する。夜に恋人と一緒に部屋に入る時も撮影されるのは苦痛です」。王さんは隣人に「カメラを外してほしい」と交渉したが、「以前、泥棒に入られたことがある。また狙われるか心配なので外せない」と断られたという。

 同じ上海市の宋(Song)さんは逆のケースだ。自宅の庭にごみを無断で捨てる人がいるため、玄関に360度撮影できるカメラを設置した。すると隣人から「日常の様子を撮影されるのは、プライバシー侵害だ」と訴えられた。

 こうした簡易カメラの値段はピンキリで、1000元(約1万9212円)以上の機種も多い一方、わずか3.9元(約74円)で購入できるワイヤレスカメラもある。安価なカメラの中には、アクセス防止機能もなく、パスワード設定も簡易なものが多い。昨年4月、北京市第3中級人民法院(日本の地方裁判所に相当)で明らかになった刑事裁判は市民に驚きを与えた。被告は自分で開発したアプリで中国、日本、韓国など国内外のカメラ18万台にアクセスし、画像が見られる状態にしていた。

 カメラの不正アクセスを「権利」として販売しているヤミ業者もおり、インターネットで隠語を使いながら「プライベート画像をのぞき見できる」と宣伝しているサイトもある。昨年10月には四川省(Sichuan)で、100か所以上のカメラの「アクセス権」を買っていた容疑者が逮捕された。民家や企業、レストラン、美容院などのカメラをのぞき見していたという。ヤミ業者の摘発も各地で行われているが、類似行為は後を絶たない。

 中国の治安管理処罰法では、盗撮行為は5日間以内の拘留か500元(約9606円)以下の罰金が科せられるが、中国メディアや専門家の間では盗撮行為の厳罰化を求める声が出ている。(c)東方新報/AFPBB News