【3月4日 東方新報】中国の新卒採用は日本のような総合職ではなく、ジョブ(特定の職種)採用が主流で、新卒にも即戦力を求める。就職活動で面接官が学生に尋ねるのが、「どの企業で何か月、インターンシップ(就業体験)を受け、どんな仕事を体験したか?」そのため学生は夏休みなどを利用し、数か月にわたり企業のインターンシップを受けるのが当たり前になっている。有名企業はインターンシップを希望する学生が殺到するため、学生は就活以前に「イン活」に四苦八苦している。

 大手証券会社はインターン生の募集要項で「博士号か修士号の取得者が優先」と明記。普通の大学生は北京大学(Peking University)や清華大学(Tsinghua University)などの一流大学でないと門前払いされやすい。また、「関連企業でインターンシップの経験があることが望ましい」とも。インターン生になるには、まず他の企業で体験してからと、就職までのハードルは果てしなく高い。

 こうした状況から、最近は「仲介業者」が登場している。例えば、履歴書は日本のような決まったフォーマットがないため(世界的には日本の方が珍しい)、業者は企業にアピールできるような履歴書を学生の代わりに作成し、経歴を「盛る」こともある。そして有名企業に売り込みを図る。ただし、手数料は2万元(約36万5080円)以上が相場で、決して安くはない。

 しかし、仲介業者というと詐欺的な手口が社会問題になっている。「特別ルートで一流企業に推薦」「希望が実現しなければ全額返金」とうたいながら、学生の希望がかなえられず、返金にも応じない業者もいる。そもそも大企業は仲介業者を相手にしていないのだが、業者が担当社員を取り込むケースもある。中国のIT大手「騰訊(テンセント、Tencent)」は1月、同社の社員が仲介業者と結託して学生に正規でないインターンシップを手配し、学生が業者に払った手数料の一部を受け取っていたと発表。社員は解雇され、警察の捜査を受けている。教育省などは「インターンシップを有償で仲介する業者を認めない。悪質な場合は法的責任を追及する」と表明している。

 一方、企業がインターンシップの名目で若者らを無償労働させていることも問題となっている。最近では大手証券会社が大学を卒業したばかりの女性を9か月間、インターンシップの名目で仕事をさせ、一銭も払わずに「解雇」したことが訴訟となった。証券会社は「女性はインターン生であり、会社側が勧誘したものではない」と主張したが、裁判所は「女性は大学を卒業しており、雇用関係が存在していた」として会社に約20万元(約366万円)の支払いを命じた。

 中国労働関係学院法学院院長の沈建峰(Chen Jianfeng)教授は「インターン生は一般の労働者にあてはまらず、労働法で保護する対象とならない。法的にはあいまいな存在だが、権利を侵害することは許されない」と指摘。専門家の間では、インターン生の権利を守る法律や制度を作るべきだとの声が上がっている。(c)東方新報/AFPBB News