【8月10日 東方新報】中国のSNSでは、生まれて間もない幼児を売買するグループが複数存在する。警察は摘発を強化しているが、「養子縁組取引」の名目で違法に利益を上げるヤミの仲介業者も暗躍している。

「私は妻と離婚し、2人の子どもを育てています。その後、ある女性と交際して息子が生まれましたが、彼女は家の金を持ち出して姿を消してしまいました。生活が困窮し、生後10か月の息子を育てることができません。どなたか引き取っていただけないでしょうか…」

 中国のSNS「QQ」のとあるコミュニティーグループに昨年、広東省(Guangdong)広州市(Guangzhou)の男がそんな投稿をした。このグループには、子どもがいないために「養子縁組」を求める約300人が参加しており、多くのメンバーが男と連絡を取った。交渉の結果、広州市から約1800キロ離れた河北省(Hebei)の夫婦が6万元(約102万円)の「補償金」を支払い、男児を引き取った。

 しかし、男の投稿は作り話だった。交際していた女性との間に男児が生まれたのは事実だが、女性が広州市を離れている間、男児を勝手に売買していた。女性の通報で事件が発覚し、広州市の裁判所は男に児童売買の罪で懲役6年の判決を下した。

 中国版LINEといわれる「微信(ウィーチャット、WeChat)」やQQでは、「媽媽帮(Mamabang)」「媽媽網(Mamawang)」「宝貝知道(Baobao Zhidao)」といった名称のコミュニティーグループが多数存在している。子どもの「養子縁組」を進める名目だが、民法上の養子手続きには違反している。実態は違法な児童売買で、「買い手」側の親も人身売買の罪に問われる(虐待行為などがない場合、執行猶予付き判決が多い)。それでも「1歳の子どもを養子にしたい人を募集」といった投稿に100件以上の申し出や問い合わせがあり、中には「来月産まれる予定の子どもを引き取ってほしい」という投稿まである。

 10年以上にわたり児童売買防止に取り組むボランティアは、「子どもを売るのは、未婚での出産や離婚して育児を放棄する親が多い。子どもを買う方は不妊症などで長年子どもができない家庭が多い。売買相場は、女児は5万〜6万元(約85万~102万円)、男児は8万〜10万元(約136万~170万円)。出産前に引き取りを約束する『前売り予約』も珍しくありません」と実情を語る。

 当事者は違法性を認識しているため、「生活が苦しくて育児ができない。人身売買ではありません」と強調する投稿内容が多く、金銭の取引は「補償金」「謝礼」などの言葉を使っている。さらに、コミュニティーグループを運営するヤミの仲介業者は、養子縁組証明書を偽造したり、民間病院と結託して「実の親子」のニセの鑑定書を作成したりしている。

 広州市の王彦琳(Wang Yanlin)検事は「ヤミの仲介業者は、児童売買の取引で手数料を取り、さらに偽造書類を作成して二重に利益を上げている」と説明する。

 昨年4月、ウィーチャットとQQを運営する「騰訊(テンセント、Tencent)」など複数のIT企業が、自社系列のSNSから「養子縁組」と称するコミュニティーグループを一斉に削除した。だが、隠語を使った名称のコミュニティーグループは後を絶たない。(c)東方新報/AFPBB News