【4月29日 東方新報】中国の出生数の減少が止まらない。2016年から解禁した「二人っ子政策」は期待した効果は乏しく、年間1000万人の大台を割るのは間近といわれ、出産の「完全自由化」を求める声が高まっている。

 35年間続いた一人っ子政策を撤廃した2016年、出生数は2000年以降で最高の1786万人に増加した。政府は「2017年には2000万人を超える」と試算したが、実際は再び減少モードに。2019年の出生数は1465万人で、過去40年間で最も多かった1987年の58%にすぎない。2020年の出生数も減少は確実とみられ、「第14次5か年計画(2021~2025年)の期間中に1000万人を下回る」という予測が多い。

 近年の中国の経済成長は、働いて税金を納める労働人口が多く、社会保障が必要な高齢人口が少ないという「人口ボーナス」によるところが大きい。来年から1962~1976年のベビーブーム世代が順番に定年を迎え、欧米や日本よりもはるかに速いペースで高齢化が進む。中国発展研究基金会によると2050年には60歳以上人口は5億人に迫り、全人口の3分の1を超える。労働人口の減少は社会的イノベーションの低下や労働コストの上昇をもたらし、高齢者の増加は社会保障費の増加に直結する。

 人口問題の専門家で広東省人口発展研究所所長の董玉整(Dong Yuzheng)氏は「第3子の出産容認もしくは完全自由化の措置をできるだけ早く決めた方がいい。ただ重要なのは、なぜ多くの人が子どもを産まないかを考えることだ。育児、教育、住宅、介護など、今の若い夫婦は多くの問題に直面している」と指摘する。

 公立幼稚園は全国的に不足しており、公立に通う園児の割合は1997年の95%から2019年は44%に低下した。受験戦争は日本以上に過酷で、小学生から塾や家庭教師をつけるのは当たり前。一人の子どもが高校卒業までにかかるコストは北京や上海で250万元(約4149万円)という試算もある。

 不動産価格は高騰を続けており、収入に占める住宅費の割合は2004年の17%から2018年は48%に上昇。医療費の支出は1995年から2018年で27倍になった。また、「4-2-1問題(一人の子どもが二人の両親、四人の祖父母)」と言われるように、両親や祖父母の老後の世話という負担ものしかかる。結婚して子どもを産むどころか、結婚をためらい独身生活を選ぶ若者が増えている。

 二人っ子政策の解禁前、中国の街角では「一人っ子政策を徹底しよう」というスローガンの横断幕や壁文字が至る所で見られた。子どもを産んだ女性には不妊手術も奨励され、二人目を産んだ家庭には重い罰金を科すなど、出産が「悪」のようにみなされる時代が長く続いた。政府の方針で「産めよ、増やせよ」と号令をかけられても、すぐに気持ちを切り替えられない市民もいる。また、市民からの罰金を重要な財源とし、予算や権限を手放したくないために過度の罰金取り立てや出産規制を続けている地方政府もある。全国人民代表大会が今年1月20日、「地方政府は時代遅れの出産規制を一掃し、厳しい罰則を科すことをやめるべきだ」と通知したのは、その現れだ。

 少子高齢化は多くの先進国が抱える問題で、妙案は少ない。世界一の人口大国・中国も今後、少子高齢化問題との長い格闘が続くことになる。(c)東方新報/AFPBB News