【8月3日 東方新報】中国で賞味期限間近の食品の販売に特化したビジネスが急速に広がっている。コスパを重視する若者消費層を中心に受け入れられている。

 中国西部の最大都市・成都市(Chengdu)に住む20代女性、趙玲(Zhao Ling)さんは今年に入り、「臨期食品(賞味期限間近の食品)」を専門としたディスカウントストアで買い物することが習慣となった。ポテトチップスやビスケット、ナッツ、ジュース、インスタントラーメン、調味料などが通常価格の半額以下で、商品によっては1割程度で購入できる。賞味期限は1~3か月残っているものが大半だから、安全性も心配ない。「買い物はインターネットで済ませるのが当たり前だったけど、久しぶりにリアル店舗に通うようになった。買い物かごいっぱい買っても100元(約1700円)いかない。100元って大金なんだって久しぶりに思ったわ」と笑う。

「臨期食品」を特売するチェーン店は急速に増えている。昨年10月に1号店をオープンした「小象生活」は南京市(Nanjing)を中心に既に100店舗以上を展開している。上海市が拠点の「好特売(Haotemai)」も150店舗、天津市(Tianjin)で始まった「食恵邦」も北京市や河北省(Hebei)にウイングを広げ100店舗を超えている。フードロスを禁止する「反食品浪費法」が4月に可決されたことも追い風となり、インターネットでも賞味期限間近の食品を専門としたサイトが次々と誕生している。

 SNSでも新しいムーブメントが起きている。中国最大級のユーザー参加型SNS「豆瓣(Douban)」では「我愛臨期食品」グループが昨年9月に立ち上げられ、既にメンバーは10万人近くに達している。「割引価格で、割引なしのおいしさ」をキャッチフレーズに、格安になった各種食品の情報をリアルタイムで共有している。

 業界関係者によると、食品の賞味期限が3分の1から半分を超えるとスーパーが商品を受け入れないため、メーカーが在庫を放出する受け皿として、こうしたビジネスが成り立つという。消費者からすれば、まだまだ期間に余裕がある食品が賞味期限間近の食品として格安で購入できる。市場調査会社の艾媒諮詢(iiMedia Research)が今年発表したリポートによると、中国で昨年、賞味期限間近の食品の売上高は推計で300億元(約5074億円)を超え、購入者のうち26~35歳が全体の48%と半数近くを占めた。

 急激にビジネスが広まれば、懸念も出てくる。中国版ツイッター微博(ウェイボー、Weibo)では、「#賞味期限間近の食品を長期間食べると健康を害するか?」というハッシュタグが立てられ、4億4000万回読まれ、1万7000件の書き込みがあった。賞味期限間近の食品には生鮮食品や冷凍食品もあり、まとめ買いすることで食品の期限が過ぎてしまったり、保管方法が悪く品質が悪化したりする恐れがある。

 店舗間の競争も激化しており、チェーン店以外に個人経営のディスカウントストアは設立して1年足らずで閉店することも目立っている。専門家は「利益を上げるため、食品の製造年月日を偽造して『賞味期限間近の食品』と売り出す業者も現れる恐れがある。市場監督局の監視が必要だ」と指摘している。(c)東方新報/AFPBB News