【11月7日 AFP】ウクライナは6日、親ロシア派武装勢力が掌握している同国東部付近で入国審査を開始すると発表した。東部ドネツク(Donetsk)で激しい砲撃が続き、全面衝突の再燃を懸念する声が高まる中、同国東部地域がウクライナから分離したことを事実上追認する動きだといえる。

 ウクライナの国境警備当局は声明で、今後親ロシア派掌握地域との境界を越える移動者に対し旅券(パスポート)の提示を義務付けると発表。ウクライナ人であれば移動を許可されるが、外国籍の保有者は「移動の目的を確認する審査場」へ送り、査証(ビザ)の提示を求めていくとしている。

 この新規則は、衝突が続く東部を封鎖するための安全保障上の措置と説明されているが、出入国管理を行えば自国領土内に境界があることを認めることになり、親ロシア派がドネツクとルガンスク(Lugansk)を中心とする2つの自称独立国家の樹立に成功したことを浮き彫りにすることになる。

 ウクライナとロシアの本来の国境はすでに親ロシア派武装勢力とロシア軍の手に落ちており、ウクライナ政府はロシア国境への支配力を失っている。

 アルセニー・ヤツェニュク(Arseniy Yatsenyuk)首相は5日、親ロシア派が掌握している地域に関しては年金を含むあらゆる給付金や社会保障給付金の支払いを停止すると発表していた。これもウクライナ政府が東部を近い将来に再び支配下に置くことを諦めたことを示す証拠と捉えられている。(c)AFP/Sebastian Smith with Nicolas Miletitch in Donetsk