【10月11日 東方新報】今年の中秋節(今年は9月25日)、浙江省(Zhejiang)杭州市(Hangzhou)銭塘区義蓬街道の全民村にある「聚香食品廠」が大きな人気を集めた。

工場では中秋節を前に、朝から晩まで月餅作りが続いた。「1日に3万個以上作っても足りませんでした」と、67歳の工場長、陳伝木(Chen Chuanmu)さんは振り返る。

村で30年以上続くこの工場は地元ではよく知られ、杭州市中心部や嘉興市(Jiaxing)、紹興市(Shaoxing)などから買いに来る客も多く、遠くは内モンゴル自治区(Inner Mongolia Autonomous Region)まで発送したこともあるという。

30代の地元住民は「子どもの頃から食べてきた月餅です。中秋節になると両親がいつもここの月餅を買ってくれました」と話す。陳さんは18歳の頃から地元の食品工場で菓子作りを学び、中秋節には昔ながらの蘇州式月餅を作っていた。その後、妻や村の菓子職人らと「聚香食品廠」を設立し、30年以上にわたって営業を続けてきた。

「昔ながらの味を好きな人は今もたくさんいます。私たちが作るのをやめたら、食べられなくなる人もいますから」と陳さんは話す。工場で特に力を入れているのが蘇州式月餅だ。五仁と呼ばれるナッツや種子類を使ったあん、塩・香辛料風味のあん、黒ゴマあんなどは、原材料の仕入れから焙煎、調合まで工場で行う。焼き上げには今も昔ながらの直火式オーブンを使っている。

「40年以上前に地元の食品工場で作っていた方法を、今もそのまま守っています」と陳さんは話す。月餅のおいしさを左右するのは、あんの材料と焼き加減だという。

毎年、中秋節が近づくと注文が殺到し、車で訪れて何箱も買っていく客も少なくない。ただし、月餅を作るのは毎年2か月余りだけ。中秋節の約2カ月前に生産を始め、中秋節が終わると製造も終了する。

「月餅は中秋節に食べるものです。中秋節を過ぎれば、普通のあん入り焼き菓子ですよ」と陳さんは笑う。繁忙期には15~16人が工場で働き、その多くが50~60代だ。約半数は30年ほど働いてきたベテランで、残りは毎年この時期だけ故郷からやって来る季節労働者だ。安徽省(Anhui)黄山市(Huangshan)から来た65歳の唐柏順(Tang Baishun)さんもその一人で、主に直火式オーブンを担当した。「計器を見るだけでなく、経験で火加減を判断する必要があります」と話す。

ベテラン職人も季節労働者も、月餅の繁忙期を「春節(旧正月、Lunar New Year)のようににぎやか」と表現する。工場では従業員の食事も用意され、仕事の合間には家族の近況などを語り合う。忙しさの中にも、毎年顔を合わせる仲間との再会を楽しむ時間があった。

かつてこの工場の月餅を食べて育った子どもたちも、大人になった今では、親戚や友人への贈り物として大量に注文するなど、工場を支える存在になっている。

近年は、小豆あんを使った植物性原料の蘇州式月餅や、若者向けの低糖タイプなど新しい商品も取り入れている。それでも陳さんは、「原材料と作り方については、これからも伝統を守っていきます」と話している。(c)東方新報/AFPBB News