健康志向の波が中秋市場を席巻 低糖月餅が人気に
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【10月6日 東方新報】中秋節が近づき、最も特別感のある定番商品である月餅が販売の最盛期を迎えている。今年の中秋市場では「健康志向」の強い追い風が吹き、健康を意識した低糖月餅が人気を集めている。
記者がここ数日、江西省(Jiangxi)南昌市(Nanchang)の複数のスーパーや商業施設を取材したところ、さまざまな「軽装版」月餅が次々と店頭に並び、手頃な価格の月餅ギフトセットが目立つ位置を占めていた。「低糖」「低脂質」が今年の月餅市場の大きな売り文句の一つとなっている。
南昌にある生鮮スーパー「盒馬鮮生(Hema Xiansheng)」の店舗では、約十種類の低糖月餅が販売されており、価格は数元から300元(約6219円)まで幅広い。中には「売り切れにつき補充中」と表示されている商品もあった。店内のベーカリーコーナーでは店員が手際よく低糖月餅を棚に並べていた。「このコーナーは1日に4〜5回補充しないといけません。いま残っているのは低糖の塩漬け卵黄入り蓮の実あんだけで、他の味はすべて売り切れです」と話す。
市民の孫夢夢(Sun Mengmeng)さんはベーカリーコーナーをひと回りした後、低糖月餅の箱を手に取り、配合表を入念に確認していた。「家に糖尿病の高齢者がいるので、普通の月餅は合わない。低糖月餅の方が健康にいいんです」と語る。
また、江西出身の2000年代生まれの劉晴(Liu Qing)さんも月餅の健康面を重視している。「体型維持を意識しているので、伝統的な月餅は油も糖分も多くて、一つ食べるだけで罪悪感が強いんです」と話す。節句の雰囲気を楽しむため、彼女は低糖のそば粉と黒ごま、ナッツ入りの月餅を購入した。
この健康志向の流れの背景には、消費意識の変化がある。京東(JD.com)スーパーが発表した「京東月餅カテゴリー2025年トレンド洞察報告」によると、73%の消費者が「成分の健康性」を重視しており、低糖や無添加の商品が大きく伸びている。
オンライン販売でも「低糖志向」がはっきり表れている。美団(Meituan)フラッシュ購入のデータでは、中秋節と国慶節の「ダブル連休」直前の週末、低糖月餅の販売量が前年比で2倍以上増加した。
こうした需要に応えるため、多くの企業が「甘さの負担」を軽くする工夫を凝らしている。福建省(Fujian)福州市(Fuzhou)の百餅園食品は餡の製造業者と連携し、餡の低糖化を進めている。興味深いことに、一部の病院も「健康月餅」の分野に参入しており、浙江省(Zhejiang)中医院や揚州市(Yangzhou)中医院は薬膳を取り入れた特色月餅を発売、重慶市(Chongqing)人民病院は低糖低脂を打ち出した「五珍養生餅」を提供している。
健康志向が市場を覆う一方で、消費者の購買行動はより理性的になっている。「ギフトセットは量が多すぎて食べきれないので、今はバラ売りで買う方が好きです。家族で食べたい分だけ買えるし、味の選択肢も多く、値段も安いです」と南昌市民の譚超(Tan Chao)さんは語る。
南昌市社会科学院の戴慶鋒(Dai Qingfeng)院長は「糖分を控え、負担を減らすことが社会全体の健康課題となるなかで、月餅という伝統的な季節菓子は『贈答の象徴』から『自分や家族で味わうもの』へと回帰している。これは人付き合いの体裁を重んじる『見栄の消費』から、家族や自分の健康を大切にする『実のある消費』へと、社会の意識が現実的に移りつつあることを示している」と分析している。(c)東方新報/AFPBB News