■世代から世代へ

人口68万5000人のスンバ島では、10人のうち8人はキリスト教徒だ。しかし、アニミズムと祖先崇拝を融合させた古い「マラプ」信仰も深く根付いている。

それは社会を三つの身分に分ける。「大地主であることが多い貴族の『マランバ』、普通の人々の『カビフ』、そして奴隷/召使い『アタ』だ」と、権利活動家でこのテーマに関するいくつかの研究論文を執筆したマーサ・ヘビ氏は指摘する。

マラプの宗教的指導者ウンブ・レミ・デタ氏は、宗教は「社会的階層化の本質」だとAFPに語る。伝説によれば「マランバはスンバに到着したときにアタを手に入れた」とされている。

島が、首都ジャカルタから2000キロ東にあり孤立していることも、これらの伝統的な社会構造を維持するのに寄与している。

世界最大のイスラム教徒人口を持つインドネシアだが、その社会構造は驚くほど多様だ。奴隷制は1945年、オランダの植民地支配から独立した際の憲法で禁止された。しかし、一部の伝統的な慣習は容認されている。

スンバ島に存在する従属層の人の数については、その推定数に大きな幅が見られる。匿名を条件に取材に応じたあるソーシャルワーカーは、人口35万人の東スンバ県には「約1700人」いるとAFPに語ったが、一部では、その数が数千人に上ると考えられている。

強制労働はインドネシアの他の場所にも存在する。デポックにあるインドネシア大学の歴史学者バンダン・カヌモヨソ氏はAFPに対し、「カリマンタンの先住民ダヤクのコミュニティでは、借金のために一時的な束縛状態が生じることがある」と語った。

しかし、スンバ島の奴隷制は独特であり、世代から世代へと受け継がれ、主人と従属層の人々が同じ屋根の下、ほぼ同等の環境で生活していると同氏は指摘した。

そうしたことから、労働で疲弊した様子以外の要素で、外部の人々がその身分を見分けることは難しい。

■「領主の権利」

主人たちは長い間、奴隷の支配を肉体的および性的暴力で支えてきた。

「主人は女性の召使いを『使う』ことができる」と、東スンバの影響力のあるプロテスタント系最高会議の議長である牧師マルリン・ロミ氏(57)は語り、「それは普通と見なされている」と続けた。

事実、あるマランバは「もし私が女性の奴隷を気に入っても彼女が拒否したら、彼女の夫を殴る」と、匿名を条件にAFPに語った。

こうした状況について、女性への暴力に関する国家委員会「Komnas Perempuan」の元委員長アンディ・イェントリヤニ氏は「もしあなたが女性なら、あなたは主人のものだ」と指摘。「だから(主人による)性行為は性的暴行とは見なされない。それは単に所有物に対する権力を行使することに過ぎないからだ」と説明した。

また、スンバ島の社会を研究するヘビ氏も「被害者が証言しないため」暴力は罰せられずにしばしば終わるのだと指摘した。ヘビ氏は、スンバの女性と子どものためのNGO「SOPAN」の創設者でもある。