■「性行為を強要されていた」

2024年、子どもを産んだ18歳の従属層の女性が、東スンバの中心都市ワインガプの警察に対し、13歳の時から主人とその息子に性行為を強要されていたと通報した。

しかし、インドネシア子ども保護委員会(KPAI)のディアン・サスミタさんは、通報から2年が経過しても捜査はまだ終了していないとし、当局に「事件の真相を明らかにするよう」求めている。

この若い被害者は当初NGOに保護され、現在は村で保護下にある。

牧師のマルリンは、プロテスタント教会でも「被害者が声を上げれば」女性や子どもに対する暴力のケースを支援すると語った。

しかし、島での階級制度は非常に深く根付いていると、東スンバで13年にわたり首長を務め、自身も従属層2人の主人であるギディオン・ンビリジョラ氏は語った。

同氏は、上位の人間の「考え方を変えるには長いプロセスが必要だ」と首都近くで行われた支配層の人物の大規模な葬儀の際に語った。この葬儀には従属層の人々を含む4000人が招待された。

葬儀では、キリスト教徒やイスラム教徒かを問わずスンバ島民の多くが今なお信仰する「マラプ」の儀式にのっとり、2頭の馬が生け贄として捧げられた。

1990年代初頭まで、警察は人間の犠牲を恐れてそのような葬儀を厳重に監視していたと、米人類学者のジャネット・ホスキンス氏は述べている。

過去には、マラプの儀式では奴隷が主人と共に埋葬されることが要求されていた。

■「彼らを自由に宣言する」

アムネスティ・インターナショナルやヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)などの権利団体はインドネシア政府に対し、奴隷制が憲法で禁止されていること、さらには反差別条約への合意・署名が済んでいることを再確認するよう求めている。

アムネスティ・インドネシアのハエリル・ハリム氏は、政府が「スンバでの状況を認識している」としながら、「現時点までに奴隷制を禁止するための措置を講じていない」と指摘する。また、ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)インドネシアのアンドレアス・ハルソノ氏も、政府が「マランバからの自由をすべてのアタの人々に向けて宣言すべきだ」と述べた。

こうした指摘に対し、インドネシアのユスリル・イフザ・マヘンドラ調整相(法務・人権・入管)は、憲法が奴隷制を禁止している一方で、「インドネシアは非常に多様な社会であり、社会発展は民族グループごとに異なる」と説明した。

同氏はAFPに「政府は急激な変化を強制することを望んでおらず、むしろ各コミュニティの社会発展に従って段階的に進めている」と語り、「教育がすべてを変えると確信している」と続けた。

東スンバの元首長であるギディオン氏もこの意見にほぼ同意だ。地元のエリートはほとんどが貴族から成り、彼らの多くが奴隷を所有しているため、変化は「段階的にしか来ない」ことを強調。「確実に変わると思う…知識の進歩が下層階級の人々に、この社会的な絆がもはや適切でないことを気づかせるだろう」と付け加えた。

一部の貴族はこうした状況を改善しようとしている。

王族の息子と結婚した際にアタの人々を5人引き継いだ貴族の女性、ノルリナ・ランブ・ジョラ・カルンガさん(54)は、「自分たちの家族から始めること。それが、この伝統のシステムを変える方法の一つだ」と語った。

スンバ・クリスチャン大学の元学長で宗教指導者のノルリナさんは、従属層の解放を目指している。

しかし、ノルリナさん自身もそうした人々を解放することができていない。それが慣習に反する行為だからだ。同氏の祖父は、隣接する中央スンバのプロテスタント共同体の指導者だった際に「すべてのアタの人々に自由を与えた」が、ノルリナさんの立場はそれとは対照的だ。