【4月10日 AFP】ブラジル・リオデジャネイロ州サンゴンサロに住むアラナ・アニシオ・ローザさん(20)は、ジムで知り合い、何度も花やチョコレートを贈られていた男からの交際の申し込みを丁重に断った。その1か月後の今年2月、男に自宅に押し入られ、ポケットナイフで50回ほど刺された。

早めに帰宅したアラナさんの母親(53)が、凄惨な現場を目撃した。

母親はAFPに対し、「男は娘を何度も何度も刺し続けた」「私が男を娘から引き離した。リビングルームは一面血まみれだった」と語った。

アラナさんが人工的な昏睡(こんすい)状態から目覚め、その後数週間で複数回の手術を受けて回復する中、ブラジルでは中国系動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」で「女性に『ノー』と言われた場合(振られた場合など)に備えての訓練」というスローガンを掲げ、男性たちがマネキンを殴ったり刺したりする動画が拡散した。

母親は、アラナさんを刺した男がソーシャルメディアで「この種のコンテンツをフォローしていた」と語った。

ブラジルでは、オンラインでの女性蔑視(ミソジニー)的な「レッドピル(赤い薬)」コンテンツの急増に対する懸念が高まっている。専門家は、ジェンダーに基づく暴力の発生率が高い同国で、こうしたコンテンツが女性に対する犯罪の一因となっている可能性があると警告している。

「レッドピル」は1999年の映画『マトリックス』に由来する。作中では、赤い薬を飲むことで、厳しくつらい隠された真実が明らかになる。レッドピル文化では、女性は男性を利用する存在であり、フェミニズムは男性を抑圧しているという、偏った世界観を「真実」としている。

今年1月にリオデジャネイロで17歳の少女が10代の少年5人に集団レイプされた事件で、容疑者の1人が「一片の悔いなし」と書かれたTシャツを着て警察に出頭した。このフレーズは、著名な「レッドピル」インフルエンサーと関連付けられている。

3月には、離婚を求めた妻を銃で撃ったとして、憲兵の男が逮捕された。地元メディアが報じたテキストメッセージの中で、この男は自身を「アルファオス(動物や人間社会において、集団内で優位に立つオス)」と称し、妻は「従順で服従的なベータメス」であるべきだと述べている。

国際的な現象であるレッドピル文化を研究しているサンパウロ大学(USP)のダニエル・カラ教授は、この文化が女性に対する暴力を「正当化、助長している」と指摘する。