メルツ独首相の杭州訪問 なぜ宇樹科技に足を運んだのか
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【3月16日 東方新報】就任後初めて中国を訪問したドイツのフリードリヒ・メルツ(Friedrich Merz)首相は2月26日午後、浙江省(Zhejiang)杭州市(Hangzhou)にある宇樹科技(Unitree Robotics)を訪れた。
武術の演武、格闘デモ、組立ラインの脇で仕分け作業をこなす様子など、同社の展示ホールでは複数の人型ロボットが次々と高度な動きを披露し、来場者の目を引いた。
メルツ首相はデモを見ながら何度も頷き、親指を立てて称賛。同行したドイツ企業の幹部らもスマートフォンで撮影し、中にはロボットと記念撮影をしたり、一緒に踊ったりする人もいた。
今年、中国各地の春節(旧正月、Lunar New Year)関連の番組では、複数の「具身型AI(エンボディド・インテリジェンス)」企業のロボットが大規模に登場し、難度の高い動きで世界を驚かせた。舞台での話題はすぐに消費の熱に転じ、国内のロボットレンタルサービスのプラットフォームは、春節期間の受注が前期比で約70%増えたとしている。
老舗の工業大国であるドイツでも、アルゴリズムや大規模モデル(大規模AI)とスマートハードウェアの深い融合により、製造業の高度化のテンポが変化している。ドイツの最新の公式統計では、製造業付加価値は3年連続で縮小し、自動車や機械設備製造の落ち込みが目立つ。
中国社会科学院欧州研究所・欧州経済研究室主任の孫彦紅(Sun Yanhong)氏は、ドイツの政府と企業界は中国のデジタル経済のイノベーション最前線に強い関心を寄せるだけでなく、そこから協力と互恵の機会を見いだしたいと考えていると指摘する。
視察中、メルツ首相は「パートナー」「ユーザー」と書かれたパネルの前で足を止めた。片側にはドイツのトップ大学や研究機関が並び、もう片側にはフォルクスワーゲン(Volkswagen)、シーメンス(Siemens)、DHLなどドイツ企業の大手が記されていた。この中国のロボット企業は、すでにドイツの産学研エコシステムに組み込まれているということになる。
宇樹科技の王興興(Wang Xingxing)董事長は取材に対し、今回の訪問はドイツ企業との協力をさらに広げる窓口であり、世界規模でスマートロボット産業の発展を共に推進する機会だと語った。
北京外国語大学(Beijing Foreign Studies University)・地域・グローバルガバナンス高等研究院の崔洪建(Cui Hongjian)教授は、中国のテック企業を訪問することで、対中協力・投資を拡大することがリスクなのかチャンスなのかという問いに対し、メルツ首相はより直感的な答えを得たはずだと述べ、中国の長期戦略の成果と成長余地についても、より包括的に理解しただろうとした。
中国はドイツにとって重要市場であるだけでなく、サプライチェーンや産業高度化においても鍵となる。ドイツの「インダストリー4.0」と中国の具身型AIが交わる中で、両国の経済・貿易の論点は貿易規模から、将来の製造の論理をどう捉えるかという共同判断へと重心が移りつつある、との見方もある。
ドイツ政府が技術・イノベーション・デジタルなどの分野で掲げる新たな発展戦略は、中国の「第15次五か年計画(十五五)」期におけるスマート化、グリーン化、融合化の方向性と高い親和性がある。発展戦略のすり合わせを進め、AIなど最先端分野の対話と協力を促すことは、両国が「開放的で互恵的なイノベーション・パートナー」であることの当然の内容だといえる。
今回の訪問期間中に発表された中独共同記者声明では、双方が「互恵・ウィンウィンの協力を深める」意思を示した。成果リストによれば、関係機関や企業が産業協力や機械製造などの分野で複数の協力文書に署名し、ドイツ企業の人型ロボット向けデジタル・スマート工場が中国の地方に設置されることも盛り込まれた。メルツ首相の今回の訪中は日程が非常にタイトで、ドイツメディアは「これほど周到に準備された訪問はかつてない」と評した。わずか2日間で北京市と杭州市を回ったのも、地方レベルの協力を後押しする狙いがあるとみられる。
近年、宇樹科技を含む「杭州六小龍(杭州を拠点とする6つの先端テクノロジー企業の総称)」が注目を集め、杭州は世界の研究都市トップ10入りを果たしたとされる。当地のイノベーションの勢いとエコシステムは関心を集めている。
26日、浙江省の責任者と面会したメルツ首相は、ここで「経済発展の力強い活力を感じた」と率直に述べ、人的交流や企業往来をさらに促進したいと語った。日程の終盤には、今回の訪問を「実り多く、楽しいものだった」とし、次回の訪中にも期待を示した。
旧暦の午(うま)年に中国を訪れた最初の外国指導者として、メルツ首相は故宮(紫禁城、Forbidden City)の記帳簿に「一馬当先、龍馬精神(先頭に立って、力強く前進する)」という祝意を書き残した。今回の訪問は過去と未来をつなぎ、中独協力の発展にさらに「馬力」を加えるものとなった。(c)東方新報/AFPBB News