【12月10日 AFP】英国は9日、ロシアの有利となるように情報操作を行ったとされる団体と、英国とその同盟国に対するサイバー攻撃を行ったとされる中国企業2社に制裁を科した。

英外務省は新たな制裁対象リストとともに発表した政策文書で、「欧州全域で、物理的脅威からサイバー戦争、情報戦に至るまで、ハイブリッドな脅威がエスカレートしている。これらはすべて、悪意ある外国の利益のために、われわれの民主主義を不安定化し、重要な国家インフラを弱体化させ、われわれの国益を損なうことを狙っている」と述べている。

制裁対象にはロシアのメディア「ライバー(Rybar)」も含まれており、「ライバーのテレグラムチャンネルと28言語の関連ネットワークは、世界中で数百万人に届いている」とイベット・クーパー外相は述べた。

ライバーは「偽の『調査』やAI(人工知能)を活用したコンテンツなど、クレムリン(ロシア大統領府)の典型的な情報操作戦術を用いて、世界情勢に関するナラティブをクレムリンに有利に仕立て上げている」とクーパー氏。

同氏によると、ライバーは「独立機関を装っている」が、ロシア大統領府や国営企業から一部資金提供を受け、ロシアの情報機関と協力関係にあるとされる。

また、ロシアの対外情報機関、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)のフロント企業だと非難されているプラ​​ブフォンド財団も制裁対象となった。

「リークされた報告書によると、プラブフォンドはクレムリンのナラティブを西側諸国に広める活動に資金を提供しているほか、有罪判決を受けたロシアの暗殺者や武器密売人の弁護費用も拠出している」とクーパー氏は述べた。

また、ウラジーミル・プーチン大統領の思想に多大な影響を与えたと広く考えられているロシアの右派思想家、アレクサンドル・ドゥーギン氏と、そのシンクタンク「地政学専門知識センター」も制裁対象となった。

ドゥーギン氏は、欧州からアジアにまで広がる帝国を築くことで、ロシアは西側諸国の行き過ぎから世界を解放しなければならないとする「新ユーラシア主義」の提唱で知られている。

英国はさらに、中国に拠点を置く「i-Soon」と「Integrity Technology Group」を、英国とその同盟国に対する大規模かつ無差別なサイバー攻撃を行ったとして制裁対象にした。

クーパー氏は、「このような攻撃は、私たちの集団安全保障と公共サービスに影響を及ぼすにもかかわらず、犯人は誰を、何を標的にするかをほとんど考慮せずに行動している」「そのため、私たちはこのような無謀な活動が放置されることのないよう徹底している」と述べた。(c)AFP