■「混沌(こんとん)の中で繁栄」

今では、カアブネさんの先祖代々の家を歩き回っているのは、活動家と一匹の猫だけだった。ひっくり返された子ども用自転車や捨てられた靴が、混乱の中での退去だったことを物語っている。

イスラエル・パレスチナの草の根団体「スタンディング・トゥギャザー」のイスラエル人活動家、サハル・カントールさん(29)は、「私たちは土地を見張るためにここにいる。なぜなら、住民が避難していなくなった家は、入植者に略奪されることが多いからだ」と語った。

一方、丘の上では、入植たちが小屋を解体し、ソファとテーブルを備えた家を建てていた。

カントールさんは、「彼ら(入植者)は混沌の中で繁栄している」「ある意味、ここは無法地帯だ。当局が巡回しているが、法を執行していない。したとしてもごくまれにだ」と説明した。

ヨルダン川西岸での入植活動を監視するイスラエルのNGO「ピース・ナウ」と「ケレム・ナボット」が昨年12月に発表した報告書によると、入植者たちは近年、アウトポストを利用してヨルダン川西岸の14%を奪い取っている。

入植者はパレスチナ人を追い出すため、「イスラエルの政府と軍の支援を受けて」嫌がらせや脅迫、暴力などを行っているという。

イスラエルの右派政権の閣僚の中にも入植者がおり、極右の閣僚たちはヨルダン川西岸の併合を呼び掛けている。

カントールさんは、入植者たちがヨルダン川西岸中部のアルハトゥルラ地区を狙っているのは、この場所がパレスチナ国家にとって重要な意味を持つためだとの見方を示した。

だが、カアブネさんは、ヨルダン川西岸東部の避難先にも、入植者たちは避難先まで追いかけてきており、丘の上からカアブネさん一家を監視していると語った。

「安全だと思っていたこの地域でさえ、真に安全ではない」「やつらはどこまでも追いかけてくる」とカアブネさんは嘆いた。(c)AFP