中国・内モンゴル:「草原シルクロード」でチャハルの民俗文化を味わう
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【12月9日 People’s Daily】内モンゴル自治区(Inner Mongolia Autonomous Region)シリンゴル盟(Xilingol)のエレンホト市(Erenhot)国境検査場から中国に入国した多くのモンゴル人観光客は、その足でウランチャブ市(Ulanqab)へ向かう。ここで旅の疲れを癒し、心安らぐ時間を過ごすためだ。
数百年前、内モンゴルのウランチャブは「草原のシルクロード」と「北方の茶葉の道」における交易の要衝だった。塞外の要衝・張家口(Zhangjiakou)からモンゴル草原の中心都市クールン(Kulun、現在のモンゴル国の首都ウランバートル)へ至る「張庫大道」では、行き交う商人と文化交流が途絶えることはなかった。
現在のウランチャブは、モンゴル国やロシアなどへ通じる重要な玄関口となっている。6路線の鉄道、7本の高速道路、8本の国道が交差し、その利便性から「一帯一路(Belt and Road)」と「中欧班列」の地方の中枢として発展している。
市のランドマークである「鳳凰楼」に登れば、街中を縫うように流れる川と並木の緑を一望できる。温泉ホテルでは入浴、サウナ、や温泉を楽しむことができる。「ここの悠久の歴史と豊かな食文化に惹かれた」と話すのは、80歳のモンゴル国の旅行者・ダブグスンブリル(Dabuge Sumberel)さんだ。
現地の観光ガイド・フスレ(Husileng)さんは「多くのモンゴル人観光客が、ウランチャブを中国旅行の最初の訪問地としている」と話す。交通の便が良く、観光資源も豊富で、彼らにとって理想的な中継地になっているという。
ウランチャブの「集寧(Jining)国際毛皮市場」は、中国北方で最大の皮革流通拠点である。人びとが気に入った商品を選ぶ賑やかな光景は、数百年前、ウランチャブに商人が集まっていた様子を彷彿とさせる。「集寧の皮革産業には長い歴史があり、多くのモンゴル人観光客が訪れる」と話すのは、集寧国際毛皮市場・観光部の楊君マネジャーだ。
初めてウランチャブを訪れた17歳のモンゴル国の少女・フラン(Hulan)さんは、自分用と両親用に革靴を買った後で、「ほかの商品も試してみたい。ここの商品はデザインが豊富で作りが精巧、価格も手ごろで、とても魅力的」と笑顔を見せた。
ウランチャブでは、草原文化を代表するチャハル文化が今も生き続けており、この地の対外交流の活発さの秘訣となっている。
集寧師範学院の欧軍(Ou Jun)教授によると、「チャハル」とは、チンギス・ハーン(Genghis Khan)時代に起源をもつ蒙古族の部族名で、当時の護衛軍に由来する名称だ。チャハル文化の核心理念は、開放の実践、多様な文化の吸収、善行・礼節、信義遵守を重んじることにあるという。欧教授は「チャハル文化は草原文化の中でも、農耕文化と最も早く融合した部族文化の一つだ。ウランチャブはその重要な発祥地の一つとして、多様な文化が共存する遺伝子を深く根付かせている」と紹介した。
37歳のモンゴル人観光客ウユンチキグ(Uyuntsetseg)さんは、自らの見聞を「ウランチャブの発展ぶりには驚いた。観光業も非常に盛んで、これはここに住む人びとの勤勉さ、誠実さ、善良さと深く関係していると思う」と話す。
チャハル右翼後旗の草原には、雲のように見える新型のゲル(モンゴル式住居)が点在する。「この新型ゲルは地面から少し浮かせて設置しているので、遠くから見ると草原に浮かぶ雲のように見える。そこで私はこの新型ゲルを『ウレングリ』と名付けた。モンゴル語で『雲の家』という意味だ」と語るのは、ウランチャブでゲル製作技術の国家級無形文化遺産の代表継承者であるトン・リグ(Tonrig)氏だ。トン氏は現代的な住居コンセプトとデジタル技術を取り入れ、伝統文化に新たな命を吹き込んでいる。
伝統的なゲルは空間が狭く、プライバシーが確保しにくい上、屋内の水回り設備も不足していた。トン氏はゲルの外形を保ちながら構造を改良し、現代の生活に合うように機能を拡張した。フレームや構造材にはロシア産のオウシュウアカマツを使い、従来の羊毛フェルトと新素材のポリウレタン断熱材を組み合わせて保温性を高め、屋根には太陽光パネルも設置した。内部には移動式の一体型移動式バイオ汚水処理システムを備え、現代生活の利便性と草原の環境保護を両立させた。
今日、新型ゲル「ウレングリ」は海外にも進出し、モンゴル国の文化・観光産業の発展にも寄与している。昨年、直径30メートル、敷地面積約1000平方メートルの「ウレングリ」がウランバートルのリゾート地で完成した。同年、トン氏は中国・山東省製の数値制御加工機をモンゴル国へ送り、技術責任者を派遣して現地での「ウレングリ」製作を開始した。現地工場では、モンゴル族の吉祥紋が刻まれた「ゲル屋根の天窓」や「垂木(たるき)」が全て数値制御加工機で製造されている。トン氏が伝統工芸の意匠を紙に描くだけで、機械が精巧に再現してくれるのだ。
古くからの交通要衝であるウランチャブでは、異文化をつなぐ理念が、今もなお「梭(しゃく)」(織物で縦横の糸を通す道具)のように働き、文明交流の新たな景色を織り上げている。(c)People’s Daily /AFPBB News