【12月2日 AFP】ナイジェリア大統領府は1日、児童・生徒の大規模拉致が相次ぐなど治安危機に見舞われる中、モハメド・バダル・アブバカル国防相(63)が辞任したと発表した。

ナイジェリアでは先月、大規模な拉致事件が頻発し、主に児童・生徒ら数百人が連れ去られたのを受け、ボラ・ティヌブ大統領は26日、「国家安全保障上の緊急事態」を宣言したばかり。

大統領府のバヨ・オナヌガ報道官は声明で、アブバカル氏は健康上の理由で即時辞任すると述べた。「彼の辞任は、ティヌブ大統領が国家安全保障上の緊急事態を宣言し、その範囲については追って詳細を発表する計画を進める中でのものだ」と付け加えた。

アフリカ最大の人口を抱えるナイジェリアの治安情勢はもともと不安定だったが、最近では大規模な拉致事件が相次ぎ、緊迫化している。

ドナルド・トランプ米大統領は10月下旬、ナイジェリアを「イスラム過激派」によるキリスト教徒の殺害を理由に、宗教の自由を侵害する「特に懸念される国(CPC:Country of Particular Concern)」に指定し、軍事介入を示唆した。

ナイジェリア政府と独立系安全保障アナリストは、「イスラム過激派によるキリスト教徒殺害」を否定しているが、トランプ氏の発言によりナイジェリアの安全保障危機に注目が集まっている。

11月21日には、武装集団が中部ナイジャ州にあるキリスト教カトリック系のセントメリーズ学校を襲撃し、女子生徒と教師ら300人以上を拉致した。50人が逃亡に成功したが、残りは依然として拘束されている。

ヌフ・リバドゥ国家安全保障顧問は、ナイジャ州コンタゴラの町で学校関係者らと面会した際、「子どもたちは無事で、すぐに戻ってくるだろう」と述べたとされる。

■「盗賊団とイスラム過激派」

2014年にはイスラム過激派組織「ボコ・ハラム」が北東部チボクで276人の少女を拉致。ナイジェリア全土を震撼(しんかん)させ、国際的な非難を浴びた。それ以降も、数千~数万件の拉致事件が認知されているが、通報されていないものもあるため氷山の一角にすぎない。

北東部では16年にわたり、「ジハード(聖戦)」遂行を主張するイスラム過激派による反乱が激化しているほか、全土で不安定な治安情勢が続き、身代金目的の誘拐事件が頻発している。

北西部と中部の農村部では、「盗賊団(バンディッツ)」と呼ばれる重武装した犯罪組織が跋扈(ばっこ)し、村々を襲撃しては住民を殺害・拉致している。

最近の拉致事件では、学校や教会、モスク、結婚式などの人の集まる場所が狙われることが多いが、道を歩いていただけの農民が拉致されることもある。(c)AFP